 
日本初のアグリツーリズモリゾート「リゾナーレ那須」。開業から6年が経った今、アグリガーデンでは年間120種類以上の野菜やハーブが育ち、田んぼで採れる米は施設内のレストランで通年提供できるほどに収穫量が増えました。
畑や田んぼを活用した「ファーマーズレッスン」や「お米の学校」も大人気。ほぼ農業未経験だったスタッフが、なぜここまで? 前篇では、農を牽引する2人のスタッフにインタビュー。リゾートならではの農体験の魅力を紐解きます。
田んぼのある風景や米食文化を継承するために
「アグリツーリズモ」とは、イタリア語で農業と観光(アグリクルトゥーラとツーリズモ)をかけ合わせた造語で、その土地ならではの農体験や自然体験、文化交流を楽しむ旅のスタイルを指す言葉です。
農業をリゾートホテルのアクティビティに落とし込むのは、言葉で言うほど簡単ではないはず。そこで、開業の準備段階から農作業に関わっている、小鷹(こたか)広之さんに、これまでの経緯を聞きました。
 
――小鷹さんは中途採用だそうですね。以前はどんなお仕事を?
小鷹 いくつかあるのですが、熊本県のNPO法人で働いた経験が今の仕事につながっています。廃校になった学校の木造校舎を活用し、都市部の人たちに農村体験をしてもらうプログラムを作ったりしながら、地域の活性化を目指していました。
生産者の方と関わる機会が増えるなかで、もっと生産者にスポットライトが当たるような、地域経済が潤うような活動にしたいという思いが強くなっていったのですが、いかんせん実力不足で、なかなかうまくいきませんでした。むしろ生産者の方に負担をかけてしまって。このままではダメだと思い、一旦外に出て力をつけようと退職しました。
その後、東京で働いたのですが、「なんか違った」んですよね。疲れて、飲み歩いて、お金だけ無くなって(笑)。そんなとき、星野リゾートが「地域活性化」というキーワードでマスコミに取り上げられているのを見て、観光を通した地域貢献に興味を抱き、2011年に入社しました。
最初は「界 玉造」でリブランドの仕事に携わり、「界 川治」(現在は運営終了)、「リゾナーレ八ヶ岳」を経て、4施設目が「リゾナーレ那須」になります。
 
――那須行きはご自身の希望だったのですか。
小鷹 はい。自然と街が近いことや、日光東照宮なども含め歴史的な文化も豊かな栃木に魅力を感じたことに加え、農体験をお客様と共有する「アグリツーリズモリゾート」というコンセプトに惹かれました。施設内の畑や、隣接する8,500㎡の田んぼを活用することも決まっていたので、熊本での経験を活かせそうだと。
田んぼでは所有者の方が飼料用の米を作っていたのですが、私たちの開業に合わせて、人が食べる米を作らせてほしいとお願いしました。開業後はアクティビティに落とし込むことを念頭に無農薬での栽培に挑戦したのですが、初年度の2020年の収穫量はたったの600kg。
自然の力――特に雑草を甘く見ていたんですよね。無農薬にするには、8年から10年の時間をかけ、徐々に雑草をいじめてその種を少なくしていくのだそうです。でも、リゾートに隣接する田んぼが10年も荒れ放題というのは、さすがに看過できないということで、最低限の農薬を使うことにしました。
 
――田んぼの基本的な管理は、農家さんが?
小鷹 そうですね。田植えや除草作業、稲刈りなど、私たちが参加できる部分は当初からやらせてもらっていましたが、最初はどれが雑草かさえわからない有り様で(笑)。これをお客様に体験させてしまっていいのか、いろいろな議論がありましたが、でもとりあえずやってみよう、となりました。
ただ、どんな形で体験していただくのがいいか――プログラムの内容を話し合う段階で、那須で無農薬・無肥料米や特別栽培米、低農薬米を育てている「稲作本店」の代表・井上敬二朗さん、真梨子さんご夫妻と出会えたことが大きかったです。
高齢化や気候変動、人口減少などによる米農家の危機的な状況について聞かせてもらいながら、徐々にイメージが固まっていきました。米を取り巻く課題にリゾートとしてどうコミットしていけばいいか。井上さんたちと一緒に考えて始まったのが、2021年からスタートした「お米の学校」です。
 
 
               
            
 
                    
                   
                    
                   
                    
                   
                    
                   
                    
                   
                    
                   
                    
                   
                    
                   
                    
                   
               
               
               
               
                



 
                 
                 
                 
                 
                 
                