以前こんなケースを経験したことがあります。60代女性の患者Oさんは、40代の時に健康診断を受けて、「中性脂肪」でD判定が出たので、病院に行って再検査を受けたそうです。しかし、今度は正常値が出たため、この時は簡単な生活指導を受けるだけで済みました。Oさんは「D判定でも深刻に考えなくていいんだ」と思うようになり、それ以降は、健康診断でC判定やD判定が出ても、ほとんど心配することなく、医師からのコメントも読まずに放置するようになってしまった。

D判定を放置していたら…

 その後、60代になっても、健康診断でD判定が連続して出ているのに、相変わらず放置していました。すると医師から「明らかにひどい心雑音がある。昨年の健康診断でも指摘されていたようだけど、ちゃんと医療機関を受診しましたか? 放置しないで、必ず受診してください」と言われたそうです。その言い方があまりに深刻だったので、私の医院を訪れ、診察したところ、やはり強い心雑音がありました。Oさん自身もむくみや息苦しさなどの症状があったのに「年のせいだろう」と気に留めていなかったことを教えてくれました。

 すぐに大学病院を紹介して、精密検査を受けた結果、心臓の弁が硬くなったり、狭くなったりする「大動脈弁狭窄症」になっていたのです。

 早急に対処する必要があり、最終的には心臓の弁を取りかえる手術を受けることになりました。大動脈弁狭窄症は加齢や先天性の要素も影響しますが、もちろん脂質異常症や高血圧、糖尿病などの生活習慣病も大きく関わります。

 Oさんの場合、40代の頃に受けた健康診断で、中性脂肪がDと判定された時点で処置しておけば、手術にまでは至らなかったはずです。

 しかし、C判定、D判定でも、検査項目によって、意味するところが全く異なります。C判定であれば経過観察でよい項目もあれば、すでに病気を発症していてすぐに対処すべき項目もあるのですが、そこを無理に5段階で評価するので、どうしても詳細な状態が把握できなくなってしまうのです。

 やはり分岐点となるC判定、D判定の時点で早めに対処し、病気や症状が深刻化する前に「芽」を摘んでおくことが重要です。

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