JR大阪環状線・森ノ宮駅で電車からホームに降り立つと、「森のくまさん」の発車メロディが流れ、思わず微笑んでしまいます。大阪城公園の木々の緑の向こうには、大阪城の天守閣。大阪のオアシス的なエリアです。
「マルナカ菓子店」は、森ノ宮駅から南西へ徒歩5分。城南公園に面した小さなケーキ屋さんです。大久保俊幸さんがお菓子を作り、姉の奈美さんが販売を担当するアットホームな雰囲気。ご近所の方が小さな子供と一緒に買いに来たり、注文していたバースデーケーキを引き取りに来たり。男性客も多く、イートイン席で仕事の合間にケーキを頬張る姿も。
オープンは2012年12月12日。
「まだまだ、特別なもの、自分とはかけ離れたものだと思われがちなフランス菓子を、少しでも身近に感じてもらいたくて」と俊幸さん。「気軽に1個から買って試してみてほしいんです」とにっこり。
「姉がいるせいもあり、小さい頃、友達は全員女の子。でも、お菓子作りには男の子だからと仲間に入れてもらえない(笑)。ならば、自分で作ろうと思って」。小学生の頃からお菓子作りを始めたのだそう。製パン学校へ行ったものの、強力粉のアレルギーであることが判明。「でも、薄力粉では症状が出ず、ケーキ屋で働き始めたんです」。
俊幸さんは、大阪・上本町の有名店「なかたに亭」でも2年修業。「チョコレートのケーキのおいしさに衝撃を受けました」。今も、チョコのケーキにはこだわり続けているのだとか。
また、鶴見にあったケーキ屋さんで働いている時に、ロールケーキを作ることになって、生地の食感やクリームとのバランス、口溶けなど、自分のお菓子に対する感覚を強く意識するようになったと言います。
「オーナーにお子さんが生まれて、小さい子供さんが食べられるお菓子、日常的に食べられるものを作るきっかけにもなりました」。
ふんわり、やわらかい生地。卵やバニラの風味がして、優しい口当たりのロールケーキは、自店でも大人気の商品なのだとか。
お店を入った正面にあるガラスケースの中に、きれいなケーキが並んでいます。左手の棚には、焼き菓子やクッキー。ジャムもあります。すべて俊幸さんがひとりで作ったもの。「人工の色を付けない。子供が安心して食べられるよう、基本的にお酒は使わない。素材の持ち味を食べてもらいたい」。俊幸さんの考え方が凝縮したお菓子です。
2015.10.11(日)
文・撮影=そおだよおこ