【WOMAN】
さまざまなボーダーを超えて向き合うふたりの恋はどうなる?

 本書の軸になっているのは、34歳のSE・種田ようと、21歳の大学生・清田との恋の行方。清田は異性愛者で、種田の凜とした年上美女ぶりに、素直に惹かれてしまう。やがて清田は種田の素性を知り、<いまは男じゃない>種田を前に、人を好きになるとはどういうことなのだろう、とピュアに悩み始める。心では納得していても、そこに、“性交”のデリケートな問題も立ちはだかる。

 個人や性愛のジェンダーにおいては寛容なつもりだが、父親、母親というジェンダーについては、まだまだ考えなくてはいけないことだらけ。本書で種田はもう一人の母親として、離婚後にも子どもといい関係を築いてはいるが……。性のボーダーは低くなりつつあっても、現実社会でジェンダーの鎧を脱ぎにくいのは、女性より男性かもしれない。だからこそ、ジェンダーの厄介ごとを引き受けて自ら選んだ“性”で生きる種田を、応援したいと思うのだ。

『ボーダー』(全2巻) 渡辺ペコ

ある縁で知り合った種田から、自分はバツイチ子持ちの元男性だと聞かされ、一度はひるんだ清田だが、種田への思いは膨れ上がるばかり。一方、種田もまた、年下男の一途さに突き放せないものを感じて……。美貌のLGBTが増えた昨今、妙にリアリティーを感じる設定。
集英社 各562円
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Column

男と女のマンガ道

男と女の間には、深くて暗い川のごとき断絶が横たわる。その距離を埋めるための最高のツールが、実はマンガ。話題のマンガを読んで、互いを理解しよう!

2015.04.02(木)
文=三浦天紗子

CREA 2015年4月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

きれいな人がしてること

CREA 2015年4月号

パリ、東京、ハワイ、NYの“朝と夜”の習慣
きれいな人がしてること

定価780円