今月のテーマ「圏外な男女」

【MAN】
“圏外”とか周囲の思惑に意味はない
好きな異性に 「好き」宣言、上等

 レンタルビデオ店でアルバイトを始めた伊賀は、1つ年上の先輩・白川五十鈴にあるきっかけで強く惹かれる。接近を試みるも、彼女はあまりに難攻不落。というのも五十鈴はレアなDVDに大金をつぎ込み、栄養失調で生理が止まりそうな食生活を送ることさえものともしない映画マニア。バイト仲間から“圏外”扱いされている彼女への好意を示せば、自分もマジョリティーから圏外へ脱落のリスクを負う。第一、五十鈴は自分と同等の映画への情熱を持たない伊賀を、圏外の相手だと思っているのだ。

 非モテ男子と思われているマニアックな変人に彼の魅力を理解するモテ女子が食いつく構図は現実の恋愛市場でも見かけるが、この男女逆転のレアな状況がすごくいい。五十鈴を知ろうと彼女の好きな映画の世界を次々と吸収し、周囲の空気より大切なものは何かと目覚めていく“男としての成長ぶり”が爽快だ。恋で磨かれるのは男だって同じなのだな。

『ケンガイ』(全3巻) 大瑛ユキオ

仲間内で恋愛対象“圏外”と思われている女性に恋した男の奮闘と変化に注目。それによって、頑なすぎる当の女性にも変化が訪れる。同調圧力にめげないもう一人の“圏外”女子の存在を含め、周囲に流されず生きることの清々しさも伝えてくれる人間ドラマでもあるのだ。
小学館 各552円
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2014.12.05(金)
文=三浦天紗子

CREA 2014年12月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

贈り物バイブル2014

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定価780円