今月のテーマ「トランスジェンダー」
【MAN】
自分の性を肯定するのも、否定するのも、本当は自分!?
マリリン・モンローに憧れている<J>は常に女言葉を話し、自分を女だと思っている子どもだった。13歳のとき、Jが関わる禁忌をきっかけに、彼の母親は夫、つまりJの父親を殺してしまう。身寄りのなくなったJは、全寮制の名門学校を経営する女性に引き取られ、同校に入学。Jはそこでお目付役となったポールに好意を寄せるが、ある罪悪感を抱えている自分の人生にポールを巻き込むことを恐れ、ニューヨークで歌姫となる道を選ぶ。そんなJの半生とは。
“見られる性”であるがゆえに運命に翻弄されやすいのは一般的に女性だが、女性よりも女らしく生まれてしまったがために、Jは似た苦悩を抱える。それを救ってくれたのが、後に再会したポールの愛だ。このときJは、やっと自分のジェンダーを丸ごと肯定できたに違いない。女性性というジェンダーは、背負わされたときではなく、自らが選び取ったときに輝くものなのだろう。
『Jの総て』(全3巻) 中村明日美子
幼い頃からモンローの物まねを酒場で披露していた美しすぎる少年J。そのにじみ出る色気が、家族の悲劇の引き金になる。トラブル含みだが楽しげな寮生活、華やかだが爛れた歌姫生活、そして、最後にたどり着いた場所とは。美しきトランスジェンダーの波乱に満ちた人生を追う。
太田出版 各952円
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2015.04.02(木)
文=三浦天紗子