藁をもつかむ想いでつかみ取った環境

――それで04年「第1回D-BOYSオーディション」での特別賞受賞を機に、D-BOYSに加入します。

 もともと人よりは遅いスタートだったので、受けられるオーディションは少なかったですね。でも、俳優を目指すために1年間しっかり演技の勉強をしたり、コミュニケーション能力を高めたことや、これまでの経験で培ったことは決してマイナスにはならない、と思っていました。だから、「とにかく、一度だけでも俺を見てほしい!」という気持ちは強かったですね。自分が活躍できる場所がほしかったんです。

――そして、05年「ミュージカル『テニスの王子様』」の千石清純役で本格的に俳優デビューされるわけですが、いきなりアイドル的人気を博したことについての戸惑いは?

 正直、アイドル的な要素や人気は、まったく思い描いていなかったので驚きました。当時は、藁をもつかむ想いでつかみ取った環境でとにかく目の前のことに必死で、将来的にはさらに実力をつけて活躍できるようになれればいいと思っていました。

――その後、07年のドラマ「死化粧師 エンバーマー 間宮心十郎」や08年公開の映画『《a》symmetry アシンメトリー』では主演を務めますが、このときはあくまでも「D-BOYSの和田正人」というイメージが強かった気がします。

 あのときはとにかく貴重な経験をさせてもらっている、という気持ちが強かったです。僕自身、この仕事をしているなかで、カッコいいと思われたいというより、お客さんを楽しませたい、笑わせたいという気持ちが強く、いわゆる三枚目のキャラクターが向いていると思っていました。ただ、将来に対してや、俳優としての目標はまだ具体的にはなかった時期ですね。目の前にあることをこなすのに必死だったし、日々生活するのも必死で、もがいていた印象が強いです。

2015.03.20(金)
文=くれい響
撮影=中井菜央