自分の居場所を見つけ、状況が変わり始めた「アキバレンジャー」

――そして、12年に「非公認戦隊アキバレンジャー」の赤木信夫/アキバレッドに抜擢されますよね。

 もう30歳過ぎていたのに、「戦隊のオーディションがある」と聞いたときには驚きました。オーディションには年齢制限があったので、僕には縁のないジャンルなのだろうな、と思っていたんです。でも、東映さんが深夜(帯)で、戦隊ヒーローの新しい試みをやると聞いて「面白そう」と思ったんです。その頃、僕自身も、これから俳優としてどうやっていこうかと模索していたタイミングで、バラエティ番組とかにも挑戦させていただいたりしていた時期だったんです。それでオーディションを受けたのが、すべての始まりですね。

――信夫はガチの特撮オタクという設定だけに、かなりマニアックなセリフが多かったと思いますが、かなりのハマり役だったと思います。役作りに関してはどのように行ったのでしょうか。

 役作りはどの役に対しても、これでもか、としっかりするようにはしているんですが、オタク役なので、ただセリフを覚えて口に出すだけでは何も伝わらないし、そうなりがちになるという懸念もありました。でも、僕自身が好きになること、興味を持つことで、何かが変わってくると思いました。特撮ヒーローを徹底的に勉強しましたし、オタク文化と言われているものに対しても、前のめりになって接していきましたし、すべてにおいて愛を注ぎましたね。あの作品に関わっていた日笠(淳)プロデューサーと田崎(竜太)監督たちが実際にオタクだった。そういった現場の空気感から役を養うことができて、とても助かりました。だからこそ、面白がってセリフを言えていたんです。

――この作品を機に、私(のような男性)も含め新たなファンがついたことはどう思われますか。

 男性の方にここまで支持していただけたことに驚きました。中野サンプラザのファンイベントでは、野太い声しか聞こえてこなかったですからね(笑)。でも、この6、7年、自分の居場所みたいなものを模索していた僕が、あの場で初めて「ひょっとしたら、この環境が俺の居場所かも」と思えたんです。だから、「シーズン痛」までやらせてもらって、最高に楽しかった。あのときに感じたものや培ったものをそのまま後々の役、たとえば「ごちそうさん」の源太や、舞台「駆けぬける風のように」で演じた主人公(文化庁芸術祭賞で新人賞受賞)に生かしているような気がするんです。とにかく、あの作品がきっかけとなって、僕の状況が変わってきたと思います。だから、5年、10年経った後にまた「シーズン3」をやれたらいいですね(笑)。(次回に続く)

和田正人(わだ・まさと)
1979年8月25日生まれ。高知県出身。陸上選手として活躍後、俳優に転身。ドラマ・映画・舞台など幅広く活動。13年にNHK連続テレビ小説「ごちそうさん」の泉源太役で注目を浴び、TBS「ルーズヴェルト・ゲーム」、WOWOW「天使のナイフ」などに出演。14年の主演舞台「駆けぬける風のように」は文化庁芸術祭演劇部門において新人賞を受賞した。

こまつ座「小林一茶」
容疑者、その男の名は小林一茶。大金の盗難事件に容疑者として捕らえられたのは俳諧師の小林一茶。同心見習いの五十嵐(和田正人)が事件を紐解いていくと、浮かび上がってきたのは一茶と宿敵・竹里の壮絶な生き様と事件の真相だった…。こまつ座初登場、今もっとも旬な俳優和田正人が主演。石井一孝ほか多彩なキャストを迎え、鵜山仁の新演出で上演。井上ひさしの傑作評伝劇!
2015年4月6日(月)~29日(水・祝)
新宿東口・紀伊國屋ホールにて上演
こまつ座 03-3862-5941
http://www.komatsuza.co.jp/

くれい響 (くれい ひびき)
1971年東京都出身。映画評論家。幼少時代から映画館に通い、大学在学中にクイズ番組「カルトQ」(B級映画の回)で優勝。その後、バラエティ番組制作を経て、「映画秘宝」(洋泉社)編集部員からフリーに。映画誌・情報誌のほか、劇場プログラムなどにも寄稿。

Column

厳選「いい男」大図鑑

 映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。

2015.03.20(金)
文=くれい響
撮影=中井菜央