SNSのつながりに疲れ、言葉にできない孤独を感じる夜はないだろうか。そんな時代に、なぜ詩人・最果タヒさんの言葉は心に響くのか――。新著『星がすべて』を上梓した最果さんが語る、すべての感受性の原点と厄介な感情との向き合い方。

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感受性の根っこにある星への憧れ

――これまで星や宇宙をモチーフにした詩も多い最果さんが、今回なぜ星をテーマにした本だったのでしょうか。

最果 私は幼少期から宇宙図鑑を愛読していて、宇宙や星の話が大好きだったんです。私が見ている図鑑には、写真ではなく惑星の絵がたくさん収録されていて、とても接近したところから見る土星の輪とか……そういう絵が私の想像を刺激してくれていました。そうやって星に親しみを覚えていたから、夜空を見上げて星を見つけることも好きな子供だったと思います。

 子供時代にすごく綺麗だと思えたもの、憧れたものは、特別です。そのときの「綺麗!」という実感が胸の中で結晶となって残り続けている気がする。今も私の感受性の根っこには、星への憧れがあるように思うんです。

 何かを美しいと思うとき、それはとても主観的で、自分一人で感じ取るものなのだけど、でも、すごく確信に満ちています。誰も共感してくれなくても、それを美しいと思った私の気持ちは本物だって、当たり前に信じられる。それって本当に特別なことで。美しいものに出会えた回数だけ、自分の感受性をグッと握りしめて生きていくことができる気がするんです。私に、そんな瞬間をくれたのは宇宙であり、星でした。だから星についての本をいつか作りたいなぁとずっと思っていました。

――宇宙図鑑でのワクワクが原点にあるんですね。 

最果 宇宙図鑑に書かれている文章を理解するには、たくさんの想像力が必要で、それがいつも楽しかったです。何万光年の距離とか、地球より何倍もの大きさ、とか。言葉を追うだけじゃなかなかイメージがつかないものを、頭の中で宇宙を描いていくようにして想像する。その時間が楽しかったです。『星がすべて』というタイトルをつけたのは、私にとって感受性の根っこにあるものは、星だったからです。すべての主観的な感情や感動を信じるとき、私は昔憧れた星のことを思い出してる気がします。

2025.10.17(金)
文=最果タヒ