詩人・最果タヒさんの新しい詩集『星がすべて』(文藝春秋)が刊行された。子どものころから宇宙図鑑が大好きだったという最果さんが紡ぐ、12星座をめぐる詩とエッセイ、星座にまつわる神話や科学の話など、多数の書き下ろしから構成された一冊だ。

 そんな新著と連動するスペシャル企画『詩のプラネタリウム』が11月3日(月・祝)まで「コニカミノルタプラネタリウム 天空inスカイツリータウン®」で上映されている。

 最果さんが書き下ろした8篇の詩と星空が共鳴する幻想的なプログラムをつくり上げた、グラフィックデザイナーの佐々木俊さんとモーショングラファーの大橋史さん、企画立案者の中川奈津子さんに、制作秘話と見どころを聞いた。


はじまりは「X」のつぶやき

――このプログラムは昨年、仙台市天文台で上映され、今回が都内初上映ですね。企画が始まった経緯から教えてください。

佐々木俊さん(以下、佐々木) 僕は10年以上、最果さんと一緒に詩集や展覧会などをつくってきたのですが、2019年に京都で「詩のホテル」をプロデュースしたとき、当時テレビマンユニオンにいた中川さんがツイートしてるのを見たんですよね。「詩のホテルがあるなら、私は詩のプラネタリウムがやりたい!」って。

中川奈津子さん(以下、中川) そうなんです。最果さんの詩は、星や宇宙をモチーフにした作品も多いし、プラネタリウムにしたら面白そうだなと、ずっと思っていました。でも当時、テレビの制作会社に入社して半年くらいで、企画書をどこにどう出せばいいかもわからなくて。

 で、「詩のホテル」は佐々木さんのツイートから始まったと知って、私もつぶやけば最果さんがエゴサーチしてくれるかも、と。そうしたら本当に、最果さんから「詩のプラネタリウムやりたい!」とお返事をいただいて、そこから進んでいきました。2019年の終わりぐらいですね。

大橋史さん(以下、大橋) そうだったの? 初めて聞いたよ。中川さんの目論見通りになった、最果さんのエゴサ力がすごいね(笑)。

佐々木 「詩のホテル」は、僕のつぶやきをホテルの人が見てくれて実現したからね。どこでつながるかわからないよね。

――詩とプラネタリウムを融合させるプログラムは、どのように制作していったのですか。

佐々木 プログラムを形にしていく役割として僕が参入して、まず最果さんが台本を書いてくれたんですよね。

中川 そうです。春夏秋冬の星座を紹介するナレーションと詩の原稿がセットになった、とても素敵な台本でした。

佐々木 その台本を元に、どういう表現をするか考えたとき、このプラグラムは文字の「動き」が一番のキモになると思って、大橋君に声をかけました。何度か最果さんの展覧会にも関わってもらっていたし、文字の動かし方を細部までこだわって面白くしてくれるのは、大橋君しかいないだろう、と。

大橋 詩を映像にするって相当難しいから、手探りでしたね。どんなものをつくっていくか、最果さんも含めてかなりディスカッションしました。

 たとえば、具体的なイメージや挿絵をどうするか、とか。僕と佐々木さんのなかでは、星座や神話の登場人物を補足するような絵が、多少はあった方がいいという認識だったけど、最果さんは必要ないと。それで話し合って、ベースは言葉と星だけの世界にしようという結論に至って。

佐々木 見る人の感性や想像力を信じて委ねることに、全ベットしたんですよね。でもこの決断があったからこそ、文字の動きや詩の内容もそうだし、朗読や音楽も際立つプログラムになったと思っています。

2025.10.07(火)
文=熊坂麻美
写真=志水 隆