この記事の連載

 『心をととのえるスヌーピー 悩みが消えていく禅の言葉』は曹洞宗徳雄山建功寺の住職である枡野(ますの)俊明(しゅんみょう)さんが、禅で『ピーナッツ』の世界を読み解いた書籍です。枡野さんは、「『ピーナッツ』というコミックや作者・チャールズ・シュルツさんの生前の言葉、詩人・谷川俊太郎さんの翻訳に『禅に通じるもの』を見出した」と話します。同書より、一部を抜粋して紹介します。(全2回の1回目。2回目を読む)


暮らしの中に「けじめ」をつける

禅語「喫茶喫飯(きっさきっぱん)

サリーは「最善の生きかたは一度に一日ずつ生きること」と発表します。このセリフは、まさに「喫茶喫飯」。茶に逢っては茶を喫し、飯に逢っては飯を喫すという意味です。お茶を飲むときはただお茶を飲むことになりきればいい。ご飯を食べるときは、ただ食べることになりきればいい。丁寧に暮らそうとするときの心構えとして、これは大切なことです。やりたいこと、やるべきことが目の前にたくさんあっても、今この瞬間に全力で取り組めるのは、ただひとつ。あちらに手をつけ、こちらに手をつけ……としていると、一方で何かを忘れたり、何かが片手間になってしまいます。そして結局、何ひとつ満足に成し遂げられません。また、やりかけのものが積み重なると「あれもできていない、これもできていない」と不安が生まれます。サリーのように自分の中で境界線を設けて、一日、一日、ひとつひとつに、けじめをつけることが「今」を疎かにしない生き方です。

2023.06.02(金)
著者=チャールズ・M・シュルツ
監修=枡野 俊明
翻訳=谷川 俊太郎