この記事の連載

『心をととのえるスヌーピー 悩みが消えていく禅の言葉』は曹洞宗徳雄山建功寺の住職である枡野(ますの)俊明(しゅんみょう)さんが、禅で『ピーナッツ』の世界を読み解いた書籍です。枡野さんは、「『ピーナッツ』というコミックや作者・チャールズ・シュルツさんの生前の言葉、詩人・谷川俊太郎さんの翻訳に『禅に通じるもの』を見出した」と話します。同書より、一部を抜粋して紹介します。(全2回の2回目。1回目を読む)


答えを急いて、くだらない議論で道を間違えない

禅語「南泉斬猫(なんせんざんびょう)

禅には「公案」という修行僧が参究する課題があります。「南泉斬猫」は有名な公案です。中国の唐代、僧たちが猫の仏性について論議していたとき、それを見た師の南泉禅師は「何の騒ぎだ。適切な言葉が言えるなら猫を助けるが、そうでないならば切り捨てる」と叱りつけました。しかし、待っても誰も答えません。南泉禅師はついに猫を斬りました。その晩、一番弟子の趙州禅師が所用から戻り、この話を聞くと、履いていた草履を脱ぎ、黙って頭の上にのせて部屋を出ていきました。これを見た南泉禅師は「おまえがあの場にいれば猫が救えたものを」と嘆いたと言います。「公案」ゆえに、にわかに要領を得ず、何が正解かわかりにくいと思いますが、「南泉斬猫」が示し、南泉禅師がバッサリと斬ったのは、有るか無いか分別に興じる僧たちのくだらない議論でしょう。このコミックには、この「公案」に通じるものがあるように感じます。

2023.06.02(金)
著者=チャールズ・M・シュルツ
監修=枡野 俊明
翻訳=谷川 俊太郎