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 日本有数の藍の生産地として知られる、徳島県美馬市。江戸時代、藍で財を成した商人たちが建てた家屋が並ぶうだつの町並みは、当時の隆盛ぶりを今に伝えます。そんなうだつの町並みには、藍染めを体験ができる施設があります。今回は、市内に工場を構えるネストローブ(nest Robe)の服をまとった俳優・山田杏奈さんと藍染めを体験しました。

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高級品から庶民の生活の一部へ。機能面でも重宝された藍染めの歴史

 染色技法の中で、世界的にも長い歴史のある藍染め。日本では、藍染めの作業が「勝ち」に通じるとして鎌倉時代に武士の間で好まれるようになり、全国的に生産が本格化するようになります。

 すくもを原料とする日本の伝統的なすくも藍には、防臭や防虫、抗菌の効果もあり、その機能面でも重宝され、藍染めは江戸時代には庶民の日常にも普及、日本人の生活に根付いたものとなりました。中でも、この美馬地域は阿波藍と呼ばれる美しい色合いのすくもが採れることから一大産地に。富の象徴ともされる「うだつ」がずらりと建ち並ぶ町並みは、往時の豊かさを感じさせます。

 近年は、オーガニックなものづくりへの関心が高い、国外のお客さんも多くこの地を訪れるのだとか。

アイテムと素材を吟味して体験スタート

 山田さんが今回、藍染めを体験したのは、道の駅「藍ランドうだつ」からうだつの街並みに向かう途中に工房を構える「阿波天然藍染やまうち うだつ工房」。瓦屋根と白く澄んだ外壁が、品性を感じさせる建物です。

 店内に入ると、自然の息づかいが伝わってくるような、藍の深い香りに包まれます。工房には大きな藍壺がふたつ並び、奥のスペースでは藍染めを施した雑貨などを販売しています。

 藍染め体験でつくることのできるアイテムは、ハンカチ(1,100円)や巾着(1,650円)などの身近な生活雑貨から、エコバッグ(4,400円)やストール(4,400円~)帽子(5,500円)などの服飾雑貨まで、幅広いオプションから選ぶことができます。

 今回、山田さんが選んだのはストール。「ストールはあまり持っていないので挑戦してみようと思いました。藍の色合いを活かして、ファッションアイテムとしてだけでなく、部屋に飾ってみたり、使い道を考える楽しみが生まれそう」と山田さん。

 ストールは麻とシルク、シルク混から選ぶことができ、素材によっても発色に個性が出るのだそう。今回選んだ絹のストールは、日の光を通す軽やかな素材で、麻よりも表面がなめらかでとろみがあります。まっ白でない生成りの色味も魅力的。

 模様は、店頭のサンプルからも選べるほか、自分でアイデアを持ち込むこともできます。今回はストールをベースに、グラデーションの模様を作ることに決めました。

2025.09.06(土)
文=福永千裕
写真=杉山拓也
ヘアメイク= 菅長ふみ
スタイリング=中井彩乃