藍壺に浸すまでの下準備も重要。心地よい緊張感が精神を整える

藍染めをするとなると、手に色がついてしまうかと心配する人もいるそうですが、実際は杞憂に終わることも多いのだとか。今回サポートくださった矢藤さんは「一滴ですぐに藍色に染まると思われがちですが、回数を重ねないと色が定着することはありません。体験の際には、ゴム手袋を着用していただきますし、安心して体験できますよ。とはいえ、何かの拍子に藍液が付着し、色が染みてしまうこともあるので、その点だけご了承いただいています」と説明してくれました。

グラデーションに染める場合は、薄い色になる広い範囲を一気に染め、その後、先端に向かって濃くなるように染色を重ねていきます。まずは、まっさらなストールを広げて、端から端まで細かい蛇腹状(アコーディオン状)に折ります。折り目をつけたまま藍液に浸し、意図的にムラを作ることで、奥ゆかしい表情が生まれるのだそう。

その後、グラデーションでいうところの白になる箇所は、生成りの色を残すため、輪ゴムでブロッキング(防染)。今回は5段階のグラデーションにするため、それぞれの境目も輪ゴムでしっかりと絞りました。
「生地を濡らしておくんですね!」
山田さんが驚いたのは、これから染める箇所を事前に水で濡らしておく工程。湿らすことで、藍液が浸透しやすくなるのです。
染まりたては意外なモスグリーン。驚きの連続の藍染め体験

山田さんも、エプロンとゴム手袋を着用して準備万端。いざ、スカーフを藍壺へ! 少しぬるい藍液の温度が、手袋を通して山田さんの手に伝わります。

藍液に30秒浸したら液を絞って、引き上げます。ストールを見ると、一般的な藍染めのイメージとは異なるモスグリーンの色味に染まっているように見えます。
「最初は緑色に見えますが、藍液は空気に触れて酸化することで藍色へと移り変わっていきます」と矢藤さん。大切なのが、染めるごとにしっかりと酸化させるために、30秒置くこと。
「30秒つけたら、30秒空気に触れさせる。藍染めは、この繰り返しです」
意外にも、長時間浸ければ濃く発色するというわけでもないのだそう。


全てのパーツの染色を終えたら、水で洗って布地に染みなかった余分な藍液を落とします。洗っていると藍の色があふれ、色が薄くなっていくような気もしますが、「色はすでに定着しているので、これ以上は落ちないですよ」と矢藤さん。
2025.09.06(土)
文=福永千裕
写真=杉山拓也
ヘアメイク= 菅長ふみ
スタイリング=中井彩乃