1回目の試験は不合格
──1回目の試験は、残念な結果に終わったそうですね。
山中 自己採点では、4、5点足りませんでした。ただ、社労士試験の1点を埋めるのに1年かかると聞いて、「あと何年頑張ればいいんだろう」と絶望しました。問題文の言い回しから正誤を見抜く力が必要で、知識があるだけでは解けない。そこが大きな壁でした。やはり実務経験がないと、イメージが湧かないんですね。
「情報だけ持っていてもダメだ、実務に関われる環境が欲しい」と思い、1年目の試験を受けた後、自己採点ですぐに不合格だと分かったので、9月から働ける社労士事務所を探そうと動き出しました。
事務所では、大変よくしていただきました。最初は週2日くらい出社し、あとは勉強。馴れてきたら、週に3、4日くらい出社して、あとは勉強というスケジュールにしていただきました。もちろん、試験直前にはしっかり休んで、勉強に集中しました。
──2回目の試験の手応えはどうでしたか?
山中 正直、ダメだったかもしれないという気持ちがものすごく大きかったです。試験は午前と午後に分かれているのですが、午前の問題に引っかかりやすいものが入っていて……。自信満々に解いたのに、帰りに他の受験生の「あの問題は絶対ひっかけで、あっちだよね」という話が聞こえてきて、もしその情報が正しければ、私は基準点を取りきれずに不合格が決まってしまう──。
その場では耐えたのですが、近所のコンビニで買い物してる時に「もうダメかもしれない」と思って、号泣してしまいました。その後、予備校などが出す解答速報を見たら、「あれ、もしかして私、合ってたかもしれない」となって、少し元気をもらいました。

──合格が決まった瞬間は、どんなお気持ちでしたか?
山中 ネットで受験番号が発表されるのを見て、自分の番号があった時に「本当に合ってる?」とものすごく驚いて、また号泣しました(笑)。それぐらい自分の中でも精一杯出しきって試験を受けたし、その結果、合格できたんだなというところで、すごく嬉しかったです。
ドラマーとしての経験が役立つ
──ミュージシャンとしての経験が、受験勉強に活かされた部分はありましたか?
山中 例えば、ドラムで新しいリズムやフレーズを覚える時って、最初は必ず失敗するんです。でも、どんどん練習をするうちに体に定着していき、できるようになる。そのプロセスでずっとやってきました。ですので、受験勉強を始めた時に全く分からなくても、「そりゃそうだよね」と自然に受け入れられたんです。「何回もやっていくうちに覚えられる」と信じて、頭や身体に定着させていくというやり方は、ドラムの習得にせよ、法令の理解にせよ、通じるところがあると思います。
──今後の展望として、どのような社労士になりたいですか?
山中 とにかく会社側も従業員さん側も、お互いが「この人を雇ってよかった」「この会社で働いてよかった」と思えるような、いい雰囲気を作れる社労士さんになれたらいいなと思っています。どちらか一方に偏るのではなく、例えば、給与を上げる代わりに働き方を変えて、成果を上げてもらう──そういった仕組みを提案することで、お互いの利益につながるような橋渡しをしていきたいです。
ここ数年の目標としては、独立開業をしたいと思っています。できれば2、3年以内には実現したいです。
2025.08.24(日)
文=文春コミック