〈【単行本発売】「息子を自殺に追い込んだ責任をどうとるんですか!?」会社に怒鳴り込むモンペの《鼻息の荒さ》〉から続く
人気バンドMrs. GREEN APPLEでドラムを担当していた山中綾華さん。バンド脱退後、合格率6%の難関として知られる社会保険労務士(社労士)の国家試験に合格、現在は社労士兼ドラマーの“二刀流”を目指している。
「そもそも社労士って何?」という人に、山中さんがぜひお薦めしたいというマンガ が『ひよっこ社労士のヒナコ 1』(原作・水生大海/漫画・河野別荘地)だ。(全2回の1回目/続きを読む)

「社労士あるある」が満載
──社労士とは労務管理と社会保険のスペシャリストのこと。社会保険や行政機関への申請書類をクライアントに代わって作成・届出をし、労務管理の相談に応じ、指導を行う仕事です。本作は、派遣社員から転職した新米社労士のヒナコが、「不当解雇」や「給料未払い」、「ハラスメント」など労務問題をめぐるさまざまな《事件》に挑む、お仕事マンガです。まず、お読みになった感想をお聞かせください。
山中 社労士事務所で働き始めて2年ちょっとになりますが、「この話そうだよね」とか「あるあるだよね」みたいなエピソードがすごく詰まっていて、共感するところばかりでした。
例えば、「余った有給休暇は会社が買い取ってくれるのか」とか「残業時間がカットされて残業代が支払われていない」などは、毎月のように見聞きする問題です。配偶者の被扶養者でいるために年収130万円未満に収まるように働き方をセーブする、いわゆる「年収の壁」もよくあります。マンガではパートタイマーの方ご自身が計算されていましたが、私が勤める事務所では給与計算をしながら、「この方は扶養内で働く予定だから、あと何時間に抑えた方がいいですよ」とアドバイスしています。

──マンガのなかでは毎年7月が非常に忙しい時期として描かれていましたが、山中さんの場合はどうですか?
山中 とてつもなく忙しいです……。6月から7月の10日までは、とにかく忙殺されますね。毎月の給与計算も、例えば15日払いや25日払いの会社があれば、それまでに終わらせないといけないので、月初めから中旬は忙しいんです。それに加えて、その時期に「年度更新」(労働保険料を計算し直す手続き)と「算定」(4〜6月の給与を基に1年間の社会保険料の基準額を決める手続き)をやらなければいけないので、かなりバタバタしました。
あと忙しいのは、年末調整の時期ですね。マンガのなかでも出てきましたが、生命保険や住宅ローン、扶養家族など控除関係の書類をすべて揃えないといけないので、ひとつでも紛失すると大変なんです。こちらも読みながら「あるある」でした。
──山中さんご自身は社労士試験を受ける前に、こういった仕事があることはご存知でしたか?
山中 正直、知りませんでした。ずっと音楽の仕事をしていて、会社に入るという経験をしたことがなかったので、全く違う世界という感じでしたね。
2025.08.23(土)
文=文春コミック