給与計算のリーダーを務める

──現在は社労士事務所で、どういった仕事をされているのでしょうか?

山中 事務所では給与計算と申請業務を2つの柱として分けていて、私は給与計算のリーダーをしています。メインは給与計算ですが、月の後半には手が空くので、その時は申請業務も手伝います。ほかには、労務相談や助成金の申請を担当することもあります。

──漫画の主人公であるヒナコは、新人社労士としてさまざまな労務問題に直面します。彼女のキャラクターについてはどう感じましたか。

山中 前職の経験を活かしながら社労士として頑張っている姿には、すごく共感を覚えました。ただ、ヒナコは元々派遣社員として総務や労務の経験があるので、最初からクライアントからの質問に電話で答えていて、「新人なのにこんなにできるんだ」と驚きました。私自身は音楽をやっていたので社会経験がほとんどなく、電話での対応やビジネスメールの書き方も、今の事務所で初めて知ったくらいなんです。私にとっては、まるでお手本のようなマンガでした。

──ヒナコは、クライアント企業から報酬をもらいつつも、元派遣社員だった経験から、働く人の立場に寄り添ってしまいます。その点はいかがでしょうか。

山中 その気持ちもすごく分かります。私も最初は、社労士は従業員の方の助けや力になれる仕事なんじゃないかというところからスタートしましたから。ところが、クライアントは会社の社長さん、つまり雇う側なんですよね。社長の意見も正しく理解しないと、両者が納得する解決策を提示することができないので、ヒナコが板挟みになって悩んでいる姿はすごく理解できます。

──原作者の水生大海さんがミステリー作家ということもあり、お仕事マンガの体裁をとりつつも、どんでん返しのようなミステリー要素が含まれています。そのあたりはいかがでしたか?

山中 社労士のマンガと聞いた時、日常を切り取ったようなものが繰り広げられるのかなと最初は思ったんです。ところが、読み進んでいくと、導入部分から気になるワードや伏線があって、話が進むにつれて事件が解決していく。ただの日常だけではない、ミステリーありきの作風がものすごく斬新だと感じました。

2025.08.23(土)
文=文春コミック