水彩で描かれた緻密で温かみのある愛らしいペンギンと猫のイラストに、心に沁みるメッセージを添えたイラストブックが人気だ。

 著者は2人組の絵本作家。美術大学を卒業後、美術教育に関わりつつ、個展などの形で作品を発表してきた。著作を世に問うのは本書が初。発売から1年半が経つが、売れ行きは現在が最も勢いがあるという。

「各地の書店でイラストのパネル展示を行ったところ、口コミでじわじわと支持が広がっていきました」(担当編集者の渡邊真彩さん)

 他人と交わり、暮らすことの喜び。日々の生活の中で不意に感じる寂しさ。普遍的な感情を扱っているので読者層は幅広い。ただ、そうした中で最も響いているのは、50代以上の女性だという。それは〈大人だからって、痛くないわけじゃないよね。「みんな我慢してるから 自分も我慢するしかない」って思っていたんだね〉といった、人生を積み重ねてきた大人だからこそ刺さる言葉も数多く載っているからか。

「疲れた心を和ませる可愛らしいイラストに加え、静かに寄り添ってくれる作者のあたたかいまなざしと“ありのままの自分を認めてあげてほしい”という願いのこもったメッセージが、気づかないうちに自分の本当の気持ちに蓋をしてしまっていた大人の方に届いているようです」(渡邊さん)

2023年12月発売。初版6500部。現在14刷6万2500部(電子含む)

君がいるから

定価 1,650円(税込)
大和書房
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2025.08.03(日)
文=前田 久