「あれ? おはな おとしちゃった ねえ みんな なにか かわりに なるもの もってきてくれない? おはなが ないと においが しないぞう……」。そんな、ちょっとマヌケで愛らしい動物たちが次々に登場して、読者にお願いをしてくる。

 『おとしちゃったぞう』は、絵本界の新星・ひろたあきらさんと、SNS総フォロワー数150万人の人気ファミリーYouTuber「ぽるぽるふぁみりー」のみきちゃんによる初のコラボレーション絵本。

 ページをめくるたびになにが飛び出すか? ワクワク・ゲラゲラ。クイズ感覚でかわりになるものを探すうちに、いつしか自分の中の「こうあるべき」が壊されてゆく――。

 痛快愉快な「さがしもの絵本」の余白には、いろんなものをおとした大人にこそ染みるメッセージが隠されていました。


●芸人時代からの縁がきっかけで絵本づくりへ

――おふたりはもともと名古屋吉本で芸人をされていたと伺いました。その頃からのお付き合いなんですよね。

ひろた そうです。僕が1年か2年ぐらい先輩で。

みき 当時、ひろたさんのコンビはすでにライブをいっぱいしていて、私たちはそれをお手伝いする後輩のような感じでした。

ひろた ふたりとも若かったから、もっと尖ってたよね。まさか一緒に絵本を作ることになるとは思ってもみせんでした(笑)

――そんなふたりが一緒に絵本を作ることになったいきさつは?

ひろた みきちゃんは僕より早い時期に芸人を辞めて、そこから一時期、まったく連絡を取ってなかったんです。でも、ある時に芸人仲間から、みきちゃんがSNSで人気者になっていると聞いて、「ぽるぽるふぁみりー」の動画を見て。僕も子供と近いお仕事をしていることもあって、話を聞きたい! と電話をしました。

みき 私もちょうど同時期に、芸人時代の先輩からひろたさんの一冊目の絵本『むれ』を出産祝いに送っていただいたんです。当時は子供に絵本を買って読むということは全くしてなかったんですが、私自身、ひろたさんが芸人時代にフリップネタで描いていた絵が大好きで。子供たちもひろたさんの絵本の大ファンになったので「ぽるぽるふぁみりー」で紹介したりして、ちょこちょこ連絡を取るようになりました。

ひろた 僕はずっとひとりで絵も文も書いていたので、誰かと絵本を作りたい気持ちがあって。みきちゃんにも再会した直後ぐらいから一緒に絵本を作ろうという話はしていました。

みき うれしかったですね。私の場合、芸人をやめることになったきっかけが結婚・妊娠で。芸人としてまだまだ頑張りたい気持ちもあったけど、家庭に入ることを選んだので、正直ちょっと未練を感じながら悶々と子育てをしていたんです。でも、たまたまSNSで自分の思いをネタにして発信してみたら、たくさんの人から反応が返ってきて――。

 「お母さん」だけじゃない、自分の人生をもういっかい始めたいなと思っていたタイミングでひろたさんと再会して、絵本を作ろうと声を掛けてもらって。また一緒におもしろいことしたい、ひろたさんの絵で私の脳みそを表現してもらいたい! と思いました。

ひろた やっぱり「ぽるぽるふぁみりー」を見ていても思うんですが、僕からするとみきちゃんはまだめちゃくちゃ芸人で、なんかおもろいことやりましょうよ! って感じが、誰よりもある。そもそも、芸人時代からみきちゃんのコンビのネタは本当にぶっ飛んでいたので、こういう絵本ができたのかなと思います(笑)。

2025.07.17(木)
文=井口啓子