●育児のリアルが生んだ、遊べる絵本というアイデア

――確かに、はなをおとしたぞう、たてがみをおとしたライオン、耳をおとしたうさぎ、背中のお家をおとしたかたつむり……。ともすれば「かわいそう」になりかねない動物たちが「ねえ みんな なにか かわりに なるもの もってきてくれない?」と呑気にお願いしてくる。なんともシュールでぶっ飛んだ絵本です。この発想はどうやって生まれたんでしょう?
みき 当時、私は次女を妊娠中で、つわりがひどくてずっと家で横になってるような状態だったんです。でも、長女は3歳で遊び盛りでじっとしていられない。だから家の中で私は休憩しながら、いかに長女の体力を使わせるかという遊びを開発していたんです。
たとえば、娘が寝転がってる私のところにご飯を配達するという体の「Uber Eatsごっこ」とか(笑)。私はサボってるんだけど娘は遊びの一環として楽しんで体力も使う、という遊びを考える中で、絵本もただ読むのではなく、子供が自発的に動きまわって遊べたらいいなーと思ったんですね。
――確かに絵本を読むのもしんどい日もありますよね。で、ついタブレットを見せちゃったり……。

みき タブレットを見せることに罪悪感を感じるママは多いですよね。私もそうだったし。本当は1日ぐらいタブレットを見せても全然いい。生きて一日を終わらせられたら母親として100点のはずなのに……って。
最初はそういう私のぐちゃぐちゃした思いをひろたさんに聞いてもらって、じゃあ、どうやったらそれを絵本に落とし込めるかな? 動物がいっぱい出てきたら楽しいよね、みたいな感じで、アイデアをお借りしながら話を考えていきました。
――たんに読むのではなく、お題を出されて、読み手が一緒に考えて楽しめる。参加形式も新鮮で楽しいです。
みき 私自身が絵本をあまり読んでこなかったので、「絵本ってこういうもの」という知識も先入観もない。だから、こういう発想が出てきたんじゃないかな。
あとは芸人時代、よくライブで大喜利をしていたので、ひろたさんとも「これはどうよ?」みたいな感じでお互いを笑かしながら話を練ってたんです。そのノリがそのまま絵本になったようなところはあるかもしれません。
ひろた 僕も絵本を読むようになったのは大人になってから。それも、もともとひとりで漫才をやるのにフリップでちょっと変なボケてる絵本を作って、それを読み聞かすネタみたいのをやってみようと思ったのがきっかけなので、絵本としては意図せず変なものになっているのかもしれません。
2025.07.17(木)
文=井口啓子