夜な夜なマンガに夢中になる大人が急増する中、2022年に誕生した「CREA夜ふかしマンガ大賞」。眠りにつく前の自分だけのひとときに、ページをめくりながら癒され、息を呑み、泣いて笑って──。第4回となる今年も、日常のあれこれを忘れさせ、新しい世界に連れ出してくれる名作が揃いました!

 今回は、マンガ家さんと二人三脚で数々の名作・ヒット作を生み出してきたマンガ編集者の方々に選考委員を務めていただきました。「夜ふかしマンガ大賞に推薦する作品」「人生で思わず夜ふかしして読んだ作品」「マンガを読むときのマイルール」など、マンガ好き必読のアンケートです。


林士平さんが「夜ふかしマンガ大賞に推薦するマンガ」

◆『邪神の弁当屋さん』イシコ/講談社

 一日一善をモットーに弁当屋を営むレイニー。かつては実りと命を司る神だったが、戦争を引き起こした罰として、いまは人間として生きている。かわいらしくも切ない物語。

「主人公は、かつて神だった存在『ソランジュ』と呼ばれ、戦争のきっかけを作った罰で人間に零落し、善行を積んで神の力を取り戻すため『弁当屋』を営む。弁当を売る日々、出会う人々との交流が描かれるファンタジー日常劇。デフォルメされた絵柄ながら、明るさの影に見える戦争の爪痕、信仰の違いによる悲劇、哀愁が滲む作品。静かな夜に、自分ではどうしようない、どうすることも出来ない世界に思いを馳せるキッカケになるような作品」

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◆『半分姉弟』藤見よいこ/リイド社

「移民の子(作中内表記は“ハーフ”)の悩みを、様々な視点で、描いている作品。私自身が、台湾人2世として、日本社会で育って来たので、とても実感を持って共感できるエピソードだらけだった。人類史上、今が一番人が移動することのハードルが下がっている時代。多くの人が移動すれば、異国で定住する人もいる。言葉や文化の壁を超えて、異国に住むことを決断した人々が出会う苦難。明確な悪意なんてなくたって、人は疎外感を感じる。違うことで生じる孤独感。理解し合おうとする尊さ。他者への想像力を助けてくれる、素晴らしい1冊です」

»【マンガ】『半分姉弟』第1話を読む

◆『スターウォーク』浅白優作/竹書房

「アニメのコンテのような独特なタッチで描かれる斬新な演出、壮大な世界観、独特の恐怖と癒しが共存する新時代SF。ある計画から26年ぶりに地球へ帰還した主人公が目にするのは、灼熱と極寒に二分され人の住めなくなった世界。AIロボット・しろわんとともに生存可能な地帯を目指し、異形の生物や謎めいた巨大構造物に遭遇する旅路。先が読めないワクワクする、未知へのワクワクを思い出させてくれるSF冒険譚です」

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