スターの証! ロマンス濃度高めの言葉力

 中島健人さんのグループ時代の決め台詞「セクシーサンキュー」は、彼が言ったおかげで「今日も笑顔だね、すてきだよ」くらいの健全な意味を持ち、世間に浸透している。ソロになってからは、この言葉を聞く機会は減ったものの、彼の発言のロマンス濃度は、1ミクロンも減ってはいない。

 『#WIP ~THE FIRST STAR~』でも名言連発。プチネタバレになるかもしれないが、書かせておくれよこの言葉!

「(自分のことを)アーティストって呼んでくれる人もいるけど、アーティストにはなれない。アイドルで生まれちゃったから。血筋を変えることなんてできない」

 きゃーーッ!!(←悲鳴に近い歓声)

 グッズのネーミングもいい。うちわが「風起師」、トートバッグが「愛をたずさえるもの」。企画会議、楽しいだろうなあ。

 ソロコンのMCでは「オレ、(アイドル界に)革命起こしたい」と言い、そのあとで、ファンに「大丈夫そう?」と激エモなレスポンスを求めたそうだ。情報源は、お笑い芸人・宮下草薙さんの公式チャンネル「宮下草薙の切り抜き30分ch.」。宮下さん、ファンタスティックな情報をセクシーサンキュー! 「革命起こす」の鼻息の荒さと、「大丈夫そう?」とファンをいたわるやさしさが、アンバランスで最高なのよケンティー(むせび泣)! 

 なにより、宮下さんが放った、ソロコンのこの感想。

「マジで! ここ数年で一番『オレ明日から頑張ろう』と思ったの」

 それそれそれ!! コロナ禍の際、ドラマのケンティーを見て、オカンが言ったのと全く同じ感想である。両若男女問わず明日へと向かわせる中島健人、すごすぎる。

「中島健人のクリエイティブは治外法権」も強気で良き。「俺はいいけどYAZAWAはなんて言うかな」という名言を持つ、矢沢永吉さんにも通ずる。自信と努力と実力の黄金比から出る言葉は、思わず「うふふ」と笑ってしまうほど無制限で、さすがスター!

 イメージを貫く努力のリミッターが外れている感じは、トム・クルーズや西城秀樹さんと同じゾーンにもいる気がする。及川光博さんとも相性が良さそうなので、2人でバディを組んでドラマ「プリンス刑事」とかやってくれないかな。一番やってほしいのは「魔法にかけられて」のエドワード王子役である。舞台化求む!

幼いころの夢の追い方を思い出す

 今回のドキュメンタリーで、彼らしいな、という言葉があった。グループ活動が終わり、ソロ活動への意気込みを語るとき、ちょっと考えて出た「すごくなりたい」という一言。

 なんかいいなあ、と思った。私も幼いころは、「大きくなったら何になりたいですか」と聞かれたとき、うまく言おうとか考えずに、素直になりたいものを言っていた。あれが「どうせ無理」とか「茶化されたら嫌だし」とかストッパーがかかって言えなくなったのはいつからだろう。

 いくつになっても「すごくなりたい」。それでいいのだ。自分の夢とか頑張り方を忘れかけたときに、彼の姿を観れば思い出せる気がする。

 まさに一番星だ、ケンティー!

田中 稲(たなか いね)

大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人では昭和歌謡・ドラマ、都市伝説、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆する日々。著書に『昭和歌謡出る単1008語』(誠文堂新光社)など。
●オフィステイクオー http://www.take-o.net/

Column

田中稲の勝手に再ブーム

80~90年代というエンタメの黄金時代、ピカピカに輝いていた、あの人、あのドラマ、あのマンガ。これらを青春の思い出で終わらせていませんか? いえいえ、実はまだそのブームは「夢の途中」! 時の流れを味方につけ、新しい魅力を備えた熟成エンタを勝手にロックオンし、紹介します。

2025.08.20(水)
文=田中 稲