美しい空間や器や料理を見て元気をもらい、キレイになれる!

銀座kappou ukai
メニュー名:ディナーコース おまかせ

クリスタルとジュレがきらめく「旬の貝と野菜のゼリー寄せ」。

 新緑の季節。晴れた休日の午後などは、どこまでも歩いていきたくなるような気持ちになります。街路樹のみずみずしい緑を見ると、心が爽やかに前向きになるのがわかります。そんな気持ちの変化に気づくと、目から入る情報がいかに心に影響するものか、ということを思ったりします。澄んだ青空を見て心が安らぐこともあれば、すくすくと葉を繁らせる木を見て元気が出ることもある。ということは、目から入る情報がキレイだと、心もキレイになるのだと思いませんか?

 食事の場面でも、美しい空間や器や料理を見て、目から元気をいただくことがあります。

 高尾山の「うかい鳥山」誕生から50年を迎える「うかい」は、まさに視覚からも元気をもらい、キレイになれる多種多様なコンセプトのお店を展開しています。なかでも、鉄板料理の「八王子うかい亭」は、明治時代の豪商の迎賓館を移築した店内に、和洋の美術品を配した美術館のよう。「うかい亭」は横浜、あざみ野、銀座、表参道にもお店があり、私がうかがったことがあるのは八王子と銀座のみですが、どちらも空間のつくり込み方が半端ではなく、本当に美を追求している人の気迫が漂っています。その圧倒的な非日常感たるや、大女優のオーラ級!?

 そんな「うかい」が4月、銀座に新業態のお店をオープンしたと聞き、先日うかがってきました。「銀座kappou ukai」という店名の通り、お店はカウンターが中心の割烹スタイル。檜一枚板のカウンターのバックの壁はにぶい銀色で、そこには「美味方丈」と書かれた扁額が掛かっています。聞けば「美味方丈」とは同店のコンセプトで、「食材を育んだ土壌や気候、作り手の愛情に想いを巡らせ、一皿に凝縮された壮大な背景や美味を深く味わう一丈四方の空間」という意味なのだそうです。そんな額を前にカウンター席に座れば、まるで茶室に入ったかのようで、自然と居ずまいを正したくなります。

カウンターのバックの壁にはお店のコンセプト「美味方丈」と書かれた扁額が掛かっています。

 すると、ほどなく料理人が現れてご挨拶してくださいます。折り目正しくもソフトな接客は、さすが銀座というか、さすが「うかい」というか。あまりにゴージャスな空間では緊張してしまう場合もありますが、ここではそんな心配はありません。ワクワクしていると、奥から別の料理人が現れ、「本日の食材でございます」と、食材を見せてくれました。

 初カツオ、赤貝、ホワイトアスパラ、はまぐり、ミル貝。新鮮な食材が氷の上に並べられた大きなガラス皿は、あわせて10キロはあるのではないでしょうか。初カツオはお造りで出します、とのことでしたが、ホワイトアスパラは和食でどんなふうに料理されるのか……楽しみです! 

取材日の「本日の食材」は、初カツオ、赤貝、ホワイトアスパラガス、ハマグリ、ミル貝。重そう!

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2014.05.20(火)
文・撮影=小松めぐみ