契約先から直接仕入れる新鮮な食材を買えて、食べられる!

ピルエット
メニュー名:「ムニュ・ピルエット」

 春は野菜が美味しい季節。春野菜特有の苦味(植物性アルカロイド)は、冬の間に体に溜まった毒素や老廃物を排出させる働きがあるそうです。美味しくて安全な野菜をたっぷり食べられるフレンチといえば、真っ先に思い浮かぶのは「ピルエット」。ここはビストロとカフェとエピスリーがひとつの空間に集まった「人と食の新しいコミュニティ」。2014年9月3日、虎ノ門ヒルズにオープンして以来、幾度となくおじゃましているお店です。

ビストロからオープンキッチンのカウンターを望む図。お店のテーマは「気軽さと上質の両立」、「食を通じてゲストとスタッフと料理と食材をつなぐ場」を展開すること。

 ここの魅力は、現在のパリの空気を感じさせる、軽やかで香り豊かなお料理。天井の高い開放的な店内の入口には、契約先から直接仕入れる新鮮な食材やワインを販売するエピスリーが設けられ、そこで扱う素材を使った料理が、同じ店内のビストロやカフェで楽しめるのです。

 ランチタイムのメニューは、カフェの場合は野菜を中心にしたワンプレート(1,200円、以下すべて税込)。品数豊富に楽しみたい欲張りな私が好きなのは、ビストロのランチ「ムニュ ピルエット」(平日 3,240円)です。

 このコースでは、まずストウブのケトルに入った温かい野菜スープがお皿に注がれ、よい香りと共に食欲が目覚めます。次に運ばれるサラダは、香りのよい旬のグリーンをたっぷり使った、みずみずしい一皿。メインディッシュは肉、魚、野菜の3種類の中から好みのものを選べる仕組みで、付け合わせには別皿で温野菜がたっぷりいただけます。

 そもそも、メインディッシュのお肉やお魚のお皿の中にも野菜がたっぷり。野菜料理を選んだ場合には、たとえば「ジャンボマッシュルームのグラタン」に付け合わせの温野菜が登場するという、野菜づくしのメニューとなります。

ムニュ ピルエットのメインの魚料理「石川県産真鯛のポワレ 根セロリのピューレ ソースノワイリー」。

 一流シェフの技術とセンスをもって表現される品々は、野菜の繊細な香りや風味を生かした、洗練されたものばかり。アドバイザリーシェフのエリック・トロション氏はM.O.Fの称号を持つ大御所で、パリでプロデュースする「Semilla」は、使用する食材の生産地や生産者を明記し、素材を吟味する姿勢が厳しいことでも有名です。

 そのトロション氏がパリにいる期間に、東京で厨房を指揮する小林直矢シェフは、2012年春から1年間、フランス各地の有名店で修業を積んで帰国した、気鋭の若手。まだ30代前半という若さですが、小林シェフは普段から健康を意識して野菜をたくさん使うように心がけているとか。お料理の腕のみならず、お肌の美しさもうらやましい限りです。

2015.04.14(火)
文=小松めぐみ
写真=CONTRAIL