この記事の連載
- UOZEN #1
- UOZEN #2
目の前の食材をいかす、最適な加熱方法を探って
できることは自分の手で。それは自ら仕留めたジビエや育てた野菜だけではなく、料理を引き立てる器や調理器具にまで至ります。
「石窯も自分で組み立てました。はじめは温度の加減が難しくて…。炭火や薪火のグリルとはまったく違って苦戦しましたが、探求していくうちに高温料理から余熱を生かした料理まで使えるようになり、いまでは欠かせないほど重宝しています」
2023年7月には店内をリニューアル。実はこのリニューアルデザインも工務店と相談のうえ、井上夫妻で手がけたといいます。
「大きく変わったのはゆったりできるカウンター席を設けたこと。使用している木材は、やわらかくて通常は使わない朴の木です。逆にそれが面白いと思いました。また、カウンター内の壁面は、箸やスプーンをつくっている地元の木工用品店『マルナオ』さんからいただいた紫檀という木材を組み合わせました」
建物の構造上どうしても取り外せない中央の柱は、剥き出しにして飾り棚の一部に。その棚も自分たちで塗装。
また、「マルナオ」のカトラリーや、「玉川堂(ぎょくせんどう)」から独立された大橋保隆さんの花器といった、ものづくりのまちとして世界的に有名な「燕三条」の職人の手によるプロダクトをはじめ、長岡市で活動する木工作家、富井貴志さんによるカトラリーなど、積極的に使用しているのも魅力のひとつです。
「ここで実際に使っていただくことで、使い勝手のよさを知り、工房まで足を運ぶというお客さんも多いんですよ。先日もうちでお出しした浅煎りのコーヒーに感動した方が、『yamaga coffee』さんのお店を訪れたと聞きました」
「Restaurant UOZEN」を通して、食はもちろん、新潟のさまざまな魅力を発信しているのがわかります。
「狩りをしている以上、生きている姿も知っているので、その命を無駄にすることなく、すべてを使い切って成仏させてあげたいという気持ちもあります。ひとつの命をどのようにしていただくか。命をいただくことの大切さについて常に考えています」
「いただきます」という言葉とともに責任を持って調理する井上シェフが生み出すのは、食の循環を感じる野生の一皿。四季折々、新潟のテロワールが詰まった「Restaurant UOZEN」の料理は、ランチ、ディナーともに「シェフのおまかせコース」でいただくことができます。
Restaurant UOZEN
所在地 新潟県三条市東大崎1-10-69-8
電話番号 0256-38-4179
入店時間 ランチ11:30~11:45(土・日・祝)、ディナー18:00~18:15
定休日 月・火曜
https://uozen.jp
2024.12.07(土)
文=大嶋律子
写真=榎本麻美