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 日本一の米どころである新潟県には、米づくりの長い歴史と伝統が息づいています。なかでもおいしいお米の産地として知られているのが、南魚沼市。

 さらに8割以上を森林が占めるこのエリアは、山の幸の宝庫でもあります。今回は、天然のキノコもお目見えする秋の「里山十帖」を訪ねました。


秋は森のキノコをごちそうに、メインディッシュは炊きたてご飯

 南魚沼の大沢地区に位置する温泉宿「里山十帖」には自前の田んぼがあり、稲刈りを終えた10月以降は、収穫したものも含め、地元の新米が供されます。

 昨年は記録的な猛暑や水不足の影響で落ち込んだ1等米の比率も、今年は9割以上と平年並みの水準に回復。「南魚沼産コシヒカリ」は日本を代表するブランド米としてその名を轟かせています。

 新米の時期に限らず、「里山十帖」の夕食のメインディシュといえば、土鍋で炊いたご飯です。使っているお米は、大沢山にある里山十帖の田んぼと、樺野沢、君沢の生産者限定のコシヒカリのみ。

「これを山の湧き水で炊くと抜群においしいんですよ。野菜にしてもお米にしてもどの水を使うかで味わいが変わってくるので、水はとても重要! やっぱり産地の水が一番だと思います」

 そう語るのは、「地に根差した料理」を心がけている桑木野恵子料理長。

「山に入って10年ほどになりますが、今年はキノコが豊作ですよ。キノコを知れば知るほど、山菜や木の実といった植物とは異なる別次元の世界を感じています」

 菌類の仲間であるキノコは、植物や昆虫に寄生したり、菌根をつくって植物と共生したり…。キノコの寄生によって樹木が倒れることもありますが、木が倒れたあとも、次から次へと菌類がリレーをして分解し、新たな種子が発芽しやすい土壌をつくっているそう。

「キノコがないと森は循環しないんですよ。つまり豊かな森にキノコは欠かせない存在。たとえば、キノコの菌根が木の根にできると、その木は太く大きくなるなど、目に見えていない森の地下では、木とほかの植物とやりとりが行われています。日本には5千から6千種のキノコの種類があるといわれ、そのほとんどは食毒不明。まだまだ未知の部分が多いのですが、料理に使えるかということよりも、キノコを通して山の環境のことを考えるようになりましたね」

 「ローカル・ガストロノミー」をコンセプトに二十四節気七十二候に沿った旬の食材を使用したフルコースを楽しめる「里山十帖」では、毎日のようにメニューが変わります。春夏秋冬を通して野菜料理が中心ですが、秋は天然のキノコや山栗といった山の恵みも登場。

2024.11.17(日)
文=大嶋律子
写真=鈴木七絵