秋のご馳走をしみじみと堪能

 そして、いよいよ日本料理「鷹庵」を率いる総料理長 高木慎一朗氏による秋の懐石料理の始まりです。「いちばんのコンセプトは何を食べているかわかること。京都にいながら京料理じゃないものを提供していきたいと思っています」と語る高木総料理長。

 先付は大黒しめじと菊菜や菊花を加減酢で和えたもの。ひと皿目から、大黒しめじの香りと食感、加減酢の塩梅に感動です。ここ鷹峯は琳派発祥の地とあって、琳派風の器使いも素敵。

 次は「時期的には少し早いですが、肌寒くなってきたので、ほっこり温まってもらえるよう用意しました」という海老芋の椀盛。鰹出汁と白味噌、海老芋のなめらかなねっとり感が相まって、思わずため息が出るようなおいしさでした。お祝いの席に合わせた紅白結びのあしらいにも日本料理の繊細さが感じられます。

 お造りの盛り合わせは、一品一品、日本各地から最高級の素材を仕入れ、丁寧に調理されたことが伝わる旨みと食感。醤油をつけるのももったいないくらいの繊細かつ濃厚な味わいでした。

 箸休に出された鯖寿司にはなんとブルーチーズのロックフォールが。「すし飯や発酵を考えた時にチーズもありかなと思って。いろいろなチーズを試した結果、ロックフォールにしました。日本料理にキャビアやフォアグラが使われ始めたのは70年代。新しい足跡を残してもいいタイミングかなと思っています」と高木総料理長。カウンター越しに食材の説明や料理に込めた思いを聞きながら一品一品を堪能できるのも、実に贅沢です。

2024.11.26(火)
文=小長谷奈都子