家族の一員としてリサを偲んだ忘れがたい夜
葬儀の後、佐々木さんと勝木さんはリサの自宅で行われた親族の集いにも招かれ、故人を偲んだ。
「リサは3人のお子さんやお孫さんに加えて、曾孫や玄孫までいる大ファミリーでした。その中に交じって、食べたり飲んだりしながらリサの思い出話に花を咲かせていると、途中で私たちにもスピーチの順番が回ってきて。それまで明るい雰囲気だったのですが、リサへの感謝を口にした途端、この17年間は奇跡のような日々だったんだなと今更ながらに感じて、とめどなく涙があふれてきました」(佐々木さん)
その後も、お孫さんが撮影したリサのドキュメンタリー映像を鑑賞したり、みんなで焚き火を囲んでダンスをしたり、優しく穏やかな時間が流れていった。
「ご家族だけでリサを偲ぶ時間も必要だろうと、ひと足先に帰ろうとしたら、“いま帰ったら家族じゃないわよ”と引き留めてくださって、みなさんの優しさが身に沁みました。リサが人生最後の瞬間まで仕事をすることができたのは、ご家族の献身的なサポートがあってこそでしたし、リサが亡き後も彼女の思いを汲んで、引き続き私たちがリサのプロジェクトを進められていることにも感謝の気持ちでいっぱいです」(勝木さん)
リサの葬儀に合わせて、トンカチのギャラリーでもリサの追悼展を開催。通常の作品展とは異なる形で、これまで未公開だった資料も紹介しながら、リサとの日々を回顧するものになった。
「リサは晩年、“人生は60歳から80歳までの20年間がいちばんいいときよ”とよく語っていました。私たちはリサの人生最良の時期に出会い、無理が効かなくなった80代後半には“これが人生よ”と悲哀を感じながらも、92歳まで走り続ける姿を見せてくれました。リサの人生観を初めて聞いたとき、私たちはまだ若くて、“最良の時期ってそんなに先なの!”とおどけるだけでしたが、今では年を重ねるたび、その言葉に勇気づけられています」(佐々木さん)
リサの追悼展を経て、佐々木さんと勝木さんはリサとの17年間を改めて振り返り、現在その記録を1冊にまとめている。それは、ふたりからリサに贈る最後のラブレターであり、知られざるエピソードやプライベートな写真がたくさん詰まった渾身の作品になりそうだ。
≫【連載をはじめから読む】すべては一通の手紙から始まった——北欧を代表する陶芸家リサ・ラーソンが日本で愛された17年
リサ・ラーソンと日本人女性2人の17年間の物語
2024.12.14(土)
文=田辺千菊(Choki!)
撮影=深野未季、平松市聖(3ページ目2枚目)
提供写真=トンカチ
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