ドラマ「SHOGUN 将軍」でゴールデングローブ賞助演男優賞(テレビドラマ部門)を受賞し、国際派俳優として注目される浅野忠信(51)。長女のSUMIRE(29)、長男のHIMI(25)もモデルやシンガーソングライターとして活躍中。そんな一家の面々を陰で支えてきたのが、浅野忠信の母、浅野順子さん(74)だ。
順子さんは、戦後、日本に駐留していたアメリカ人調理兵の父と元芸者の母の間に生まれ、1960年代、山口小夜子やキャシー中島も所属し、横浜・本牧のディスコで華やかに遊ぶことで知られていた美少女グループ「クレオパトラ党」の一員だった。さらに、60歳を過ぎて出会った恋人に才能を見出され、画家デビューしたという特異な経歴を持つ。
彼女と同時代を生きてきた畏友、ミュージシャンの近田春夫さん(74)を聞き手に迎え、稀代の女傑の半生を彼女のアトリエで掘り下げる。

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夫が芸能マネージャーに転身
近田 子育てとナイトライフとを見事に両立させてた順子さんだけど、家事なんかは、どんな風にやり繰りしてたの?
浅野 ちゃんとやってたわよ。特に、料理に関しては、ほとんど毎日手作りしてた。
近田 和洋中でいうと、どのジャンルが得意なの?
浅野 もともとは和食が多かったけど、子どもは、大きくなるにつれて洋風のものが好きになるじゃない? すると、ハンバーグとかが増えていったけど。モトテイのお弁当も、結婚したばかりの頃からちゃんと毎日用意してたのよ。
近田 ……失礼ながら、順子さんにはさあ、そういう甲斐甲斐しいイメージがあんまりないんだよね(笑)。
浅野 みんなそう言うのよ。じゃあ、今度餃子パーティーやるから来てよ。
近田 ぜひよろしくお願いいたします(笑)。

浅野 うちの母が満洲からの引揚者だったから、年がら年中、家で餃子作ってたのよね。だから、私も見様見真似で作れるようになったの。それにさ、そもそも父親だって米軍の料理兵だったじゃない。
近田 そうかそうか。料理好きなのは、血筋ってことなんだね。
浅野 でも、料理はさんざん作ったから、もういいかなあなんて思ってるんだけど。ただ、誰かと一緒に住むと、どうしても作っちゃうのよね(笑)。
近田 そういうもんなのね。
浅野 まあ、ここしばらくは一人暮らしだからさ、その辺のお弁当ばっかり買って食べてる。気楽なものよ。
近田 当時の旦那さんは、後に、息子さんを始めとする多くの俳優を抱えたプロダクションを経営することになるじゃない。若い頃からマネージャーをやってたの?
浅野 デザイン会社の後は、新聞の求人広告を見て、芸能事務所に転職したのよ。採用に当たっては、空手の有段者だったということが有利に働いたらしい。
近田 最初に担当したタレントというと?
浅野 確か、ポール牧さんとか、お笑い系のタレントについてたみたい。そのうち、石倉三郎さんの担当になったのよね。
近田 下世話なこと言うけど、その頃になると、旦那さんの収入もだいぶ安定してきたんじゃない?
2025.03.16(日)
文=下井草 秀
撮影=平松市聖