奇跡の島に受け継がれる「種子取祭」に参加する特別なひととき

◆星のや竹富島

 古琉球の面影を色濃く残す唯一無二の文化を大切に守り継いできた竹富島。

 国内外から多くの旅人が訪れるこの奇跡の離島が、いつもとはまったく異なる貌を見せる特別な日があります。それが国の重要無形民俗文化財「種子取祭(たなどぅい)」。

 起源は約600年もの昔に遡り、その壮大な世界観に圧倒される祭事です。旧暦9〜10月(新暦10〜11月)の甲申(きのえさる)から癸巳(みずのとみ)の10日間にかけて行われるもので、その最大のヤマ場が奉納芸能の2日間。

 水牛車観光や食堂などは一斉休業し、まさに島全体が祭りに集中。みなで一致することの大切さを説く諺(ことわざ)、「かしくさや うつぐみどぅ まさる」の心が、この島には深く根づいていることを体感して、旅人も感動の頂点へと導かれるのです。

 さて、奉納芸能の当日。

 集落には銅鑼と太鼓の音が響き、珊瑚の石垣の向こうから、ひらひらと両手を舞わせる集団が現れました。先頭には神に仕えて祭事を司り、五穀豊穣と健康を願う大役を担った「神司(かんつかさ)」の姿が。

 そして、広場で待つ人々に迎えられた後、みながひとつの輪となって踊り始めます。すると、それまでの曇り空から太陽の光が差し込み、祭りを祝福するかのように青空が広がりました。

 そんな奇跡に出会えるのも、種子取祭ならではなのかもしれません。

 清めと祓いの芸能「棒」から始まる奉納芸能は、日暮れまでひたすら続きます。華麗な舞踊、勇壮な狂言などの多彩な演目は、涙あり笑いあり。演じる者もこの日のため研鑽を重ねてきた老若男女、まさに一丸。

 そして三線や太鼓などの音曲もすべて生演奏だから迫力が違います。人口330人ほどの小さな島が育む才能に驚嘆した瞬間、この島の虜となった自分に気づくでしょう。

◆星のや竹富島がゲストに用意する特別なおもてなし

 「ウツグミの島に楽土」をコンセプトに、非日常の滞在をラグジュアリーに満喫できる星のや竹富島。島の景観形成マニュアルに則って建てられた琉球赤瓦の客室が並ぶリゾートでは、種子取祭の時季限定で特別なおもてなしを用意します。

2025.04.02(水)
文=矢野詔次郎
写真=小野祐次

CREA Traveller 2025年春号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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