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墓園から何か連れてきてしまったかな?

 最後に太白山(たいはくさん)トンネルに行く。ここはかつて石材を運ぶ列車が通っていた廃トンネルである。徒歩で通り抜ける人が列車の下敷きになって死亡する事故が起きたという情報があるが、真相はわからない。

 高さもなく、幅も狭い。長さは百メートルほどで、反対側に抜けるまでそんなに長く感じない。

 「こんなもんか」と特に立ち止まることもなく入口まで戻ろうとすると、入口付近にある退避場所のようなスペースに、長い髪の毛の束を見つける。見落としていただけかもしれないが、入ったときにはそんなものはなかったような気がするが……これは葛岡墓園から何か連れてきてしまったかな? と結論づけた。

「あの、思い出したんですけど」

 突然番組プロデューサーのS本氏が口を挟む。彼は仙台市出身なのだ。

「実は僕も高校生のころに葛岡墓園に行ったんですよ、友達と。夕暮れ時だったと思うんですけど、給水塔に着いたときにはもう日もほとんど沈んでて……そしたらなんか、給水塔に向かって手をふっている女の人がいたんですよ。あれ何してんだろうと友達と言ってたら、急にこっちをふり返ってニコッとしたんです。僕ら急いで逃げたんですけど、いま思い出しました」


松原タニシ氏が厳選した怪談を100話収録した『恐い怪談』から抜粋。

恐い怪談

定価 1,650円(税込)
二見書房
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松原タニシ(まつばら・たにし)

1982年、兵庫県出身。松竹芸能所属のお笑い芸人。事故物件に住み続ける"事故物件住みます芸人"として知られる。YouTube「松原タニシch」「松原タニシのぞわぞわチャンネル」を運営。ラジオレギュラー番組に「松原タニシの生きる」(ラジオ関西)、「松原タニシの恐味津々」(MBSラジオ)などがある。『事故物件怪談 恐い間取り』(二見書房)がベストセラーとなり、著者累計40万部を誇る。
X:@tanishisuki

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