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怪談界きってのストーリーテラーであり、著者累計の売上は40万部を突破した松原タニシ氏。この夏上梓した『恐い怪談』(二見書房)は、タニシ氏が取材を重ねた実話怪談から選りすぐりの100本を構成して書き下ろしたもの。
お盆だもの、タニシさんの珠玉の怪談で涼しくなってみませんか? 初日の本日は「給水塔の女」。
給水塔の女
ユーチューブで「松原タニシのぞわぞわチャンネル」という番組をやっている。その日は過去に行った心霊スポットについて解説するという配信だった。
2017年はとにかくいろんな心霊スポットを回った。そのなかから仙台で行われた怪談イベントの帰りに寄った3カ所の心霊スポットについて話した。
まず初めに行った八木山橋は、標高差70メートルの高さがあり、飛び降り自殺が多いことで有名な橋である。2メートル以上ある飛び降り防止フェンスは上部が鼠返しのように内側を向いていて、乗り越えられないようにされている。
橋の真ん中付近で手すりに不自然な手形を見つけたが、特に霊感のない僕には何も感じない。ただ、次の目的地までの道中、切っているはずのカーステレオから雅楽のような音が流れたのは変だった。
次に行った葛岡(くずおか)墓園は、中心部の頂上付近に建っている給水塔を反時計回りに3周すると、車のエンジンが止まったり、何かがついてきたりするなどの心霊現象が起こると噂されている。また、この墓地はアルファベットのA地区からY地区までエリアごとに区切られているのだが、夜中に行くとあるはずのないZ地区が現れるという話もある。
僕はこの給水塔を反時計回りに13周した。しかし誰かが追いかけてくる気配はない。
2024.08.10(土)
文=松原タニシ
写真=志水 隆