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古民家レストランで本格フレンチに遭遇「お料理 あなぐち」

 佐渡島の海岸沿いでは、トベラの白い花も真っ盛り。ミツバチや大きなハチ、さまざまな蝶もこの花が大好きなようで、花の香りに誘われてたくさん集まっていました。まさに花の島、佐渡。海岸近くの道路脇を歩くと、多種多様な花の光景に出合うことができます。バスでのんびり余韻に浸りながら、帰路へ。

 ディナータイムは、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている宿根木集落へ。

 伝統的建造物が並ぶなかでも美しい日本庭園がある古民家は珍しく、そこをフランス料理店に再生したのが「お料理 あなぐち」。入り口の説明には、「穴口さん」と呼ばれる屋号で、廻船問屋や作徳米で材をなし、明治時代には常に佐渡の長者番付に名を連ねるほど繁盛していたと記されていました。

 佐渡の旬の食材を使った本格フレンチが楽しめる古民家レストランで、新潟ガストロノミーアワードも受賞しています。

 築100年以上の屋敷の門をくぐり、一歩足を踏み入れると、そこは四季折々の表情を見せる日本庭園。静かな佇まいのなか、季節感あふれるフレンチを堪能できます。

 黒鮑、サザエ、トビシマカンゾウの蕾、コブ鯛…。食材として使用するのは、地元の農家さんや漁師さんから仕入れた、佐渡の豊かな大地や海で育まれたもの。冬季(12月~2月)は、佐渡・相川の真鴨などを使ったジビエ料理も登場するそう。狩猟免許も取ったので、ゆくゆくは自らの手で仕留めた食材を使いたいというオーナーシェフの菊池猛さんの料理は、素材本来のよさと味わいを最大限に引き出します。

 季節によって入れ替わるメニューはコースのみで、昼は3,850円と4,950円、夜は6,600円と8,800円を用意しています。ぜひ美しい盛り付けと器も楽しんで。

 佐渡では、春から初夏にかけてサザエが最も旬の時期。壷焼きも刺身も美味ですが、煮込んでいただくフリカッセは、濃厚なソースとサザエの肝をかみしめたときの味わいがたまりません。また、新玉ねぎと新じゃがいもの付け合わせたメインディッシュ、佐渡牛のもも肉の炭火焼きも絶品。新玉ねぎとバターだけを使用したソースは、素材の甘みとほんのりとした辛味がアクセント。火を入れすぎるとただの甘いものになるのでさっと火を入れて辛味と香りを残しているそう。

 菊池さんは、子どもレストランなどの地域活動をするなかで、「一般社団法人しなしなやらんかや」を立ち上げ、小木町出身の看護師さんとともに社会においてそれぞれのハードルを感じている人たちが集えるような社会活動にも力を入れています。近々小木町に気軽に一杯と立ち寄れるようなコミュニティバル&コミュニティナースもつくる予定。カウンセリングをしながら、お酒やお茶を提供するそうなので、そちらもお楽しみです。

お料理 あなぐち

所在地 新潟県佐渡市宿根木402
電話番号 0259-58-7227
営業時間 11:00~17:00
定休日 日・月・火曜
https://www.anaguchi.com

2024.08.05(月)
文=大嶋律子(giraffe)
写真=釜谷洋史