妹と過ごす面白くて楽しい時間

──江口さん自身も兄妹がいらっしゃいますが、今回演じた長女・弥生という役柄に共感した点は?

 弥生と私は年齢もほとんど一緒だし、独身という状況も似ています。私と違うところは、母から何かを強要されていないという点かな。弥生は母に「こうしなさい、ああしなさい」と言われていたけれど、私は本当に自由にやらせてもらっています。ただ、妹に対して「お母さんにこうしてあげて」みたいに言っちゃうところは弥生と似ているかもしれない。

──妹さんについ口出しをしてしまう。なぜそういうことを言ってしまうんでしょう?

 それはやっぱり、妹がしっかりしてないからですよね(笑)。まあ妹からしてみたら「お前が言うな」と思っているでしょうけど。家族って自分のことを棚に上げて、色々言っちゃいますから、難しいですよね。

──たしかに。家族や兄妹との関わり方で、江口さんが心がけていることはありますか?

 ある程度、距離はあったほうがいいなと思いますね。家族だけれども別々の人間だし、別々の人生を歩んでいる。そのことを気に留めておかなくてはいけないなって。家族だからって何から何までやってあげたりするのは違うじゃないですか。

──距離をとる。

 たとえば、私は兄妹の中でも、住んでいるところが近いこともあって、特に妹とよく遊ぶんですよ。スーパーに行ったり、ご飯を食べに行ったり。で、妹と会うとやっぱりかわいいし、面白いから楽しい時間なんです。でも連日会いすぎると腹が立ってきます(笑)。

反抗期は35歳くらいになってから来た

──映画では母との関係性も描かれていましたが、お母さんとの関係はいかがですか?

 母が何かを強制してきたことはないし、うちの家族はいい家族だなって思ってます。だからなのか、反抗期も遅かったですね。35歳くらいになってから来た。だいぶ大人になってから、母に反抗したくなってしまう時期がありました。

──それは何か、理由があったんでしょうか?

 何に対してイラッとしたかというと、子供扱いするところかな。「もう大人なのに」って。いちばんイラッとしたのは、たけのこの季節にたけのこを一本丸ごと買って、たけのこご飯を作ったという話をしたら、母が「えらいねぇ」と言ったこと。こうして話すとめちゃくちゃしょうもないことじゃないですか。

 でも「そんなことで褒めてくるなんて、まだ子どもだと思ってんの?」とすごく腹が立ってしまった。当時はそれに腹を立てる自分のことも嫌になりました。嫌いなわけじゃないのに、イラッとしてしまうことがある。それは家族ならではの感情なのかもしれない。不思議ですよね。

2024.07.14(日)
文=釣木文恵
写真=佐藤 亘
スタイリング=清水奈緒美
ヘアメイク=草場妙子