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島の歴史を物語るヘリテージハウス

 ネグロス島には、島の歴史と文化を反映した歴史的邸宅「ヘリテージハウス」が点在し、それぞれ人気の観光スポットとなっています。これらの建物は、主に19世紀から20世紀初頭にかけて、当時の富裕なサトウキビ農園主や地主によって建てられたものです。

 数あるヘリテージハウスのなかでも、別格の規模と歴史を誇り、もはや遺跡といわれるのが、タリサイ市の広大な砂糖プランテーションにある「ザ ルインズ」です。かつてのサトウキビ農園の大地主、ドン マリアノ ラクソンが、亡き愛妻を偲んで建てた大邸宅で、つくられたのは1900年ごろ。長い間、ドン マリアノとその子どもたちが暮らしていました。

 しかし、第二次世界大戦で日本軍がネグロス島に侵攻した際、その拠点とされることを防ぐために火がつけられ、屋根や床は焼け落ちてしまいました。骨組みだけの姿となった「ザ ルインズ」ですが、ネオ・ロマネスク様式の美しい柱や彫刻、庭園の噴水などが、当時の荘厳な雰囲気をいまに伝えています。

ザ・ルインズ  The Ruins

https://theruins.com.ph/

 同じタリサイ市にある「バライ ニ タナ ディカン」は、1883年に建てられたヘリテージハウス。博物館として機能する以前は、砂糖農場主であり一帯の村長も務めた、通称・タナディカンの一家が、100年以上暮らした住まいでした。

 建物の外壁は、レンガとコキーナ(貝殻やサンゴを砕いてつくったタイル)を使った伝統的な石造り。重厚な家具を配したリビング、ダイニング、ベッドルーム、執務室などは見応え充分です。家族と使用人の通路が分けられていたり、キッチンや洗い場が屋上にあり換気や排水の工夫がなされていたりと、当時の暮らしもリアルに感じられます。

バライ ニ タナ ディカン Balay ni Tana Dicang

所在地 PXP8+76R,Entique Lizares St. Talisay City,Negros Occidental
電話番号 +63 34 495 2104

2024.07.04(木)
文・写真=伊藤由起
協力=フィリピン政府観光省、shifumy(江藤詩文)
写真協力=Kazuki Kei Kiyosawa