「自分の武器となるものを見つけて磨いていきたい」
――新吉も抜擢でしたよね。抜擢といえば『天守物語』の亀姫です。泉鏡花原作の幻想的な世界を描いた物語で演じたのは異界のお姫様、これは難役だったでしょうね。
もう本当にどうしたらいいのかわからなくて……。最初、全然できなかったんです。いろいろな方の映像を拝見して勉強しても、自分の中でなんかこう腑に落ちなくて。ところが(主役の富姫を何度も演じている演出の坂東)玉三郎さんが、私服のまま1分くらい実演してくださった時に「これだ!」と思いました。言葉で説明するのは難しいのですが、一瞬にして行くべき道が見えました。
――映像とリアルの違いでしょうか。目指すべき姿が現実となって目に前に立ち現れたのですね。人から人へと伝承されてきた伝統芸能の奥深さを感じます。最後に今後の方向性やどういう俳優さんを目指したいと思われているのか教えてください。
自分は背もそんなに高くないですし娘役をいただく機会が今のところは多いのですが、立役にもチャレンジしていきたいと思っています。実際、半年くらい前に勘九郎の兄にその意思を告げました。いろいろな役を経験し、それらを通して自分の武器となるものを見つけそれを磨いていきたいと思います。今まさにそれを探っているところです。
勘三郎さんの十三回忌追善公演はこの後も各地で続き、3月は「名古屋平成中村座 同朋高校公演」が行われます。鶴松さんは『弁天娘女男白浪』の赤星十三郎、『義経千本桜 川連法眼館』の亀井六郎、『二人藤娘』の藤の精を演じ、立役と女方それぞれで異なる役どころを演じます。
「もっと大きな役者になると信じている」(勘九郎さん)
最後に勘九郎さんからいただいたメッセージをお届けいたします。
「父がいなくなってしまったのは本当に残念ですが、僕たち兄弟以上に悲しみと共に悔しさや戸惑いを感じているのは鶴松かもしれません。本格的に役を教われる年齢に差し掛かった時期のことでしたから。そんな状況の中、自主公演『鶴明会』を企画して『春興鏡獅子』を勤めるなど努力しています。『野崎村』のお光という経験を経て、これからもっともっと大きな役者になって欲しいですし、そうなってくれると信じています」
十八世中村勘三郎十三回忌追善「猿若祭二月大歌舞伎」
2024年2月2日(金)~26日(月) 【休演日】13日(火)、20日(火)
昼の部 新版歌祭文 野崎村、釣女、籠釣瓶花街酔醒
夜の部 猿若江戸の初櫓、義経千本桜 すし屋、連獅子
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/856
東海テレビ開局65周年企画
十八世中村勘三郎十三回忌追善「名古屋平成中村座 同朋高校公演」
2024年3月6日(水)~18日(月) 【休演日】12日(火)
昼の部 弁天娘女男白浪、身替座禅
夜の部 義経千本桜 川連法眼館、二人藤娘
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/other/play/857
今こそ、歌舞伎にハマる!
2024.02.24(土)
文=清水まり
写真=平松市聖(インタビュー)
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