この記事の連載

八木 泉さん[ジュンク堂書店池袋本店コミック担当]

Q1:夜ふかしマンガ大賞に推薦する作品は?

●『ローズ ローズィ ローズフル バッド』いくえみ綾/集英社

 少女マンガに挑戦する、アラフォーマンガ家の神原正子。徹夜で、読みきりを描き上げた正子は鷹野怜を食事に誘うと鷹野からの告白と、まるで、少女マンガのような急展開。恋と連載の両立はいかに……!?

「いくえみさんの最新作は40代の主人公、久々にいくえみさんの作品に感情移入してしまいました。ついに40代、自分世代の主人公作品が読めることに感謝です」

●『家が好きな人』井田千秋/実業之日本社

「常日頃から丁寧な暮らしをしたいと思っていましたが、こういう何気ない日常を丁寧な暮らしというんだな、としみじみした作品です」

●『スペアタウン ~つくろう自分だけの予備の街~』清野とおる/集英社

「いま住んでいる街(ホームタウン)以外に、何かの予備にスペアタウンを作ろうという清野とおるさん。その発想はなかったし、気になりすぎる」

Q2:人生で影響を受けたマンガは?

●『まんが道』藤子不二雄(A)/小学館

 戦後漫画史の貴重な記録でもある、連載期間43年に渡った著者の自伝的長編ロマンであり、日本マンガの金字塔。

「数年に一度は必ず読み返すバイブル的作品。挫折しかけたとき、あのシーンを読み返します。足塚茂道、連載持ちすぎてそのまま田舎の富山に戻りすべての原稿を落とす……。たくさんの迷惑をかけた後に再びトキワ荘に戻ったふたり。たまらないですね」

Q3:夜ふかしマンガの楽しみ方は?

「お休みの前の日に早めにベッドに入って、猫たちとゴロゴロしながら夜ふかし読み」

Q4:いま、特に注目している作品は?

●『チェンソーマン』藤本タツキ/集英社

「『ジャンプコミックは、もう買うことはないだろう』とだいぶ前から思っていたのに……。そもそも私の好みのジャンルがサブカルなのですが、こんな作品をジャンプで出されてしまったらもう……めっちゃオモロすぎる。はよ次の巻! ってなっています」

Q5:いま、読み返したい名作は?

●『イタズラなKISS』多田かおる/集英社

「最近引っ越しをしたので家の本棚の片付けをして、久々に読み返さねば! と思った名作。入江くんっていまの少女マンガのツンデレ元祖ですよね。10巻(マーガレットコミック)のプロポーズとか全女子がキュン死にしますよね」

Q6:とにかく泣きたい夜におすすめの作品は?

●『ポッケの旅支度』イシデ電/KADOKAWA

「イシデ電さんの愛猫ポッケの最後のときを描いたエッセイ。うちにもかわいい愛猫がふたりおりまして、いつかその日が来ることを毎日考えながら生きているので、感情移入しまくって泣いてしまいました。大切な人とのお別れはいつでもすぐそこに」

Q7:期待の新人作家とその作品は?

●『67歳の新人 ハン角斉短編集』ハン角斉/小学館

「67歳の新人、この作品が読めたことへの感謝、凄いです!」

●『ダイヤモンドの功罪』平井大橋/集英社

「個人的に歴史コミックとスポーツコミックが苦手なんですが、編集さんからぜひ読んでほしいと言われ、読んだところ、これは売れる……と思いました。思っています、みなさんどうですか? まだ答えは見えていません。女性ファンが絶対つきます、これは、きた!」

Q8:深夜ひとりでコッソリ読みたい作品は?

●『真夜中ごはん』イシヤマアズサ/宙出版

「この作品は長らく愛していますが、その名の通り、真夜中にこっそり食べるごはんがおいしそうで……。家にあるものを簡単レシピで作る真夜中の背徳感! これはみんなでワイワイ読むものではなく、ひとりこっそり読みたい、もちろん真夜中に!」

八木 泉(やぎ・いずみ)さん
ジュンク堂書店池袋本店コミック担当

丸善ジュンク堂書店でコミックジャンルアドバイザーチーフを務める。コミック担当歴は20年以上というマンガの専門家。

2024.02.01(木)
文=大嶋律子(Giraffe)