梅酢や梅干し、梅肉エキスの梅パワーを毎日の食卓に!

――ところで、乗松さんは梅製品をどのように召し上がっていますか。

乗松 私が最もよく使うのが赤梅酢です。梅酢は梅を塩漬けにしたときに梅から出てくる液体のことです。最初に上がってくるのが白梅酢で、白梅酢にしそを漬け込んだものが赤梅酢です。どちらもポリフェノールやクエン酸などの有機酸が豊富で、抗菌作用は梅干しより強いと言われています。

 私が元気なのは栄養豊富な梅酢をお塩代わりに毎日使っているからかも知れません。梅酢の使い方がわからない方も多い昨今ですが、この万能調味料は一度使ったら手放せなくなりますよ。

◆梅酢の代表的な使い方

・天然の防腐剤として
 煮物やピクルスの漬け汁、カレーなどに、塩の代わりや隠し味程度に使います。持ちがよくなり、素材の味も引き立ちます。

・肉や魚の下ごしらえに
 スプレーなどで梅酢を食材にふりかけ、10〜30分ほど置いてから調理します。臭みが取れ、ジューシーに美味しく仕上がります。

・ご飯の旨みと保存性をアップ
 炊飯時に米1合に対し、赤梅酢をシュガースプーン1~2杯加えて混ぜます。炊き上がりはふっくら、つややか。甘味も出て、塩味や色は残りません。腐りにくく、梅酢をおにぎりの手塩にすれば一石二鳥です。

・発色効果
 なすやニンジン、えびや銀杏、食用菊などに梅酢を使うと、クエン酸やアントシアニンの働きで色鮮やかに発色。料理が華やかになります。

・根菜類の時短調理に
 里芋やごぼうは風味が増し、短時間で味が入り、柔らかく煮上がります。

・熱中症予防ドリンクに
 梅酢に含まれる塩分、クエン酸、リンゴ酸は熱中症予防や疲労回復に効果的です。水500ミリリットルに梅酢小さじ1と好みではちみつなどを加えれば、おいしい夏バテ予防ドリンクに。スポーツドリンクにもおすすめです。

・風邪や口臭予防に
 梅酢を水やお湯で薄め、外出後のうがいや、歯磨き後の虫歯、歯周病、口臭予防に。

養生感覚で食事に梅干しを取り入れて

――梅干しは、夏バテなどにもよさそうですね。

乗松 梅干しは食欲を刺激してくれるので、食欲のないときや養生食感覚でいただきます。杉田梅の場合は粒が大きいので、1粒を2、3回に分け、お豆腐に添えたり、小さくちぎってご飯に混ぜておにぎりにしたり。食欲のないときは梅がゆに水でといだくずを加えると身体が温まり、胃腸の働きを活発にしてくれます。

 忙しい人におすすめなのは、番茶を注ぐだけの手軽な梅干し番茶です。風邪予防や整腸、冷えとりなどに効果があります。

 私の健康を支え続けているのが、梅肉エキスです。5日間、青梅を煮詰めて作る梅肉エキスは1キロの梅からわずか8グラムしかとれない、希少なエキス。だからこそ、愛おしい。精神を集中して行う梅肉エキス作りは、私にとってメディテーションのようなものです。

 梅肉エキスは、毎朝ニンジンやリンゴジュースなどと割っていただきます。ここ一番というときは、生はちみつと1:1で混ぜて飲みます。展示販売などで人前に立つことも多いのですが、コロナを免れているのもこの梅肉エキスのおかげだと思っています。

――乗松さんのお肌がツルツルなのも梅効果でしょうか。

乗松 よく肌のことを褒めていただきますが、スキンケアは青梅と水で作る自家製化粧水のみ。天然の化粧水は肌をツルツルにし、リンス代わりに使うと髪をサラサラにします。

◆梅化粧水の作り方

(1)40度くらいの湯でよく洗った青梅8個と、かぶるくらいの水を鍋に入れ火にかける。沸騰したら弱火で8分ほど煮る。実は崩れてもOK。

(2)液体を顔や髪に塗って使う。使う分だけを冷蔵庫に入れ、残りは冷凍保存する。※少し刺激があるので、肌の弱い人は腕などで必ずテストを。

――最後に、手作りの梅干しがない場合、市販の梅干しを買うときのポイントを教えてください。

乗松 身体にいい梅干し選びは、以下の3つを参考にしてみてください。

point1 災害時に命を守る、塩分18%以上の梅干し

減塩がよしとされている時代ですが、私がこだわり続けているのは塩分18%以上の梅干しです。その理由は常温で何十年も保存が効き、添加物や冷蔵庫に頼る必要がないからです。災害時は電気も切れます昔ながらの酸っぱくてしょっぱい梅干しは、抗菌作用のある唾液を促し、校内最近の繁殖を抑え、消化機能を整えてくれます。特に災害時は、こうしたる働きが人の命を支えてくれます。

point2 裏ラベルの食品表示をチェック!

市販の梅干しの場合、食品表示の名称には「梅干し」と「調味梅干し」があります。農林水産省の定義によると、「梅干し」と表示できるのは梅と食塩、もしくはしそを加えて漬け、干したものをいいます。さらに、冷暗所保存、天日干し、という記載があれば申し分ありません。一方、「調味梅干し」は、調味料や食品添加物が使用されているものもあります。塩分が少なく、要冷蔵で賞味期限も短めです。もちろん選んでいただきたいのは前者の本物「梅干し」です。また、市販の梅酢や梅肉エキスを購入する場合も、食品表示を見て添加物のないものを選んでください。

point3 酸っぱい梅干しを選ぶ

酸味のもとであるクエン酸含有量が多いほど、身体に有効な働きが期待できます。食べたときに顔が歪むくらい酸っぱい、昔ながらの梅干しを選びましょう。

 

2024.01.05(金)
文=高橋敬恵子
撮影=森泉匡、川上輝明、榎本麻美