愛らしくても、抱っこはご法度!
悠久の昔、ロットネスト島はオーストラリア大陸と陸続きでした。それが海面の上昇により大陸と分断され、隔絶された地となりました。
ロットネスト島の面積の10%を占める12の湖は(中にはピンクレイクも!)、どれも塩湖。しかも海水の4倍もの塩分濃度です。そんな過酷な環境に動植物たちは適応するか、あるいは自然の篩(ふるい)にかけられることになりますが、その分、天敵も少なくなるわけです。
レッドリストで絶滅危惧種に指定されているクオッカですが、ロットネスト島には1万匹以上が生息しています(ちなみに人口は166人です)。島を訪れて最初のうちはクオッカを見かけるたびにカメラをかまえて大騒ぎしていましたが、しばらくたつと、案外島内のあちこちで見かけることに気づきました。
あまりの愛らしさに抱っこしたいと思っても、それはご法度。触れても、餌を与えても、いけません。罰金200オーストラリアドルが科せられます。それに好奇心いっぱいの彼らのこと、こちらがじっとしていれば、ほどよい距離感で近寄ってきてくれることも。
写真を撮るなら、カメラと顔は彼らの目の高さにあわせて、できるだけ地面近くに。ちなみに午後4~5時が遭遇しやすい時間帯だそうです。
クオッカが平和に暮らすロットネスト島はA級自然保護指定の国立公園。一般車両の走行が禁止されています。島内移動は自転車または徒歩、あるいは循環バスや電動カート(クオッカ・ホッパー)を使うことになります。
ペダルをこいで、風をきって、サイクリング。あるいは島内に整備された6~10キロのトレイルを自分のペースで自然を味わいながらウォーキング。クルマのない世界がこんなに心穏やかだったとは!? 通りすがりの人にも、片手をあげて挨拶したくなる気分です。どうやら、クオッカのみならず、人間にとっても平和な島のようです。
2023.11.18(土)
文・撮影=古関千恵子