高橋 フロリダで警察官をやっていたけれど、とある事情で辞めざるを得なくなったティムという、40代、バツイチ、子供なしという流れ者のおじさんが偶然、サウスカロライナ州のデュプレイという田舎町に流れ着いちゃって。そこでだんだんと地元の人たちとも触れ合うようになって、夜まわり番という、警察官ではないんだけれど、夜中に町をパトロールして回る仕事に。
永嶋 日本だと「火の用心」とやる人、あれの警察版というかね。
高橋 その役職に就いて……というのが、まるまる1章ちくちくと語られていく。それはそれですごくいいんですけれど。
永嶋 そのパートが終わると、それっきり、あれあの人どうなっちゃったのかな……となるんだけれど、後半のいいところでね。
高橋 こういうのをどこまでネタバレしていいのか、いつも迷いますが、このティムというおじさんの話が1章まるまるあって、そこまで主人公はまったく出てこないんですね。で、それが終わると急にミネソタ州ミネアポリスに住んでいるルークの話が始まる。で、かなりあっという間に誘拐されちゃうんですよね。
永嶋 昔のキングだったら、もう1~2章、彼の学校生活とかを書きそうなものなんですけど、わりとパシっと本題に入っていく。
高橋 そこから〈研究所〉という謎の機関に閉じこめられて。さっき言ったような、自分の部屋のようで自分の部屋でないところで目覚めて、ドアを開けて外に出てみると、まったく見知らぬ大きな建物だったと。そこには他にも、超能力を持った少年少女たちが集められていて、いろいろ暴力的な検査をされたり、耳たぶにGPSを植えつけられちゃったりする。
永嶋 読まれる方は、耳たぶのGPSは覚えておいたほうがいいですね。
高橋 そうですそうです。で、すぐビンタする技師に検査されたり、気持ち悪くなる注射を毎日打たれたりする。しかし、この〈研究所〉の目的たるやいったいなんなのか、というのはなかなかわからなくて。とにかく閉じこめられているチリチリとした日々が描かれて、すごい閉塞感でさすがキングだなと思いました。
2023.07.21(金)