高橋 えええ!?
永嶋 そりゃ、キング本人は覚えてるかもしれないけど、日頃キングを仕事にしている人たちは、うっかり気づいていなかったと。
高橋 (笑)。
キングでしかなさすぎる次作『Billy Summers』
永嶋 で、つまるところ何が言いたいかというと、来年はアニバーサリーイヤーなので、今年からいろいろと改めてキングを推していこう、伝えていこうという企画をやっていくと。これから2024年にかけて、長編が3つ用意されているんですね。1冊目が今回の『異能機関』で、次が『Billy Summers』。これもイカれた話ですよね。
高橋 ですよね。
永嶋 これも最初の説明だと、ビリー・サマーズという殺し屋が出てきて、その最後の仕事の話だよと。まあまあよくある、「殺し屋最後の仕事」ものの話かと。
高橋 ハードボイルドっぽいというか。
永嶋 キングはもともとノワールとか犯罪ものも好きな人なので、そういうものを書いたのかなと思ったら、ちょっと違った(笑)。
高橋 聞けば聞くほど、だいぶ違うものですよね。
永嶋 主人公のビリー・サマーズは人を殺すために小さな町に潜伏するんだけど、いい年をした大人がプラプラただ待っているのもヘンだよなと。どうしたら昼日中からフラフラしていても疑われないだろうか、と思ったところで、はっ、小説家といえばいいんだと。その段階でもうおかしいんですけどね。
高橋 だいたい我々みたいな仕事ならともかく、普通に暮らしていて小説家なんか会わないから、フラフラしているかどうかなんてわかりゃしない(笑)。
永嶋 他にもいろいろあるだろ、と思うんだけど、ともかくビリーさんは小説家だということにして、本当に小説を書くんですよね。
高橋 小説家を装うために、タイプライターに向かうと。
永嶋 しかも、依頼主のほうもビリー・サマーズを監視しているんじゃないかという疑いがある。そこでビリーさんは本当はけっこうインテリだし、小説なんかも読んでいる人なんだけど、わざわざ小説をたどたどしく書く。たぶん、そういう作中作が入ってくるんですよね。
2023.07.21(金)