可憐な花を咲かせなくても
見上げると眩しい緑がいっぱい。多種多様な樹木に囲まれての「緑浴」は涼を感じられ、気分も穏やかに。
入り口のパネルには、見頃の果実や種子も紹介されています。案内にあるナギイカダを探しに記念館の裏側へ探索に。
武蔵野の雑木林の面影を残す緑の中を歩いていると、時折爽快な風が吹いたりして、気温ほどの暑さを感じません。
赤くてかわいらしい実が、なんと葉についているナギイカダ。
ビワが実っていたのは正門近くで、園外からも観賞できます。
パネルやパンフレットに案内がない、大きな木に見たことのない実がぶら下がっていたりなど、園内では「何だろう?」と気になる植物と出合うことがあります。そんなときは、お役立ちアプリの出番です。
エゴノキは、「森のシャンデリア」ともいわれる鈴のような白い花が咲き終わると、少し緑がかった白い実をつけます。
エゴノキの枝先にはバナナのような白い房も。じつはアブラムシが作った虫こぶで、形が猫の足先に似ていることからエゴノネコアシと呼ばれているそう。
マユミの結実の様子。秋には熟して薄紅色になるそう。
新芽が赤く、秋には紅葉するアカシデ。雌花が動物の尾のように垂れ下がっています。
「アカシデの果穂は、ホップの果穂のようにも見えるユニークな形ですよ」
「こちらは、ニシキマンサクの木です。花が終わって実が生っています。季節の移ろいを想像しながら実を愛でるのも楽しいですよ」
牧野博士が命名したニシキマンサクの実を指差す佐藤さん。
この日に咲いていなかった庭園の花の写真もお借りしたので、ご紹介します。7月中旬にはウバユリ、オオキツネノカミソリといった花を楽しむことができるそうです
写真左:4月から5月上旬に咲くシロヤマブキ 写真右:ヤマブキの花びらが5枚なのに対し、こちらは4枚。訪れたときには花は終わっていて、4つずつ生る実をつけていました。
3月下旬から4月頃、土に半ば埋もれるように暗紫色の花を咲かせるタマノカンアオイは、濃い緑色の葉をツヤツヤさせていました。
写真左から時計回りにウバユリ、オオキツネノカミソリ、シロバナマンジュシャゲ、ユキワリイチゲ、キンモクセイ。
「ゆっくりと植物と向かい合ってみると、その風貌や季節の移り変わりを楽しめます。ここは、自らを『草木の精』と呼んでいた牧野博士がひょっこりと姿を見せそうな空間でもありますね」
展示室へも足を向けてみましょう。もちろん散策前でも散策してからでも順番は自由です。
2023.07.01(土)
文=大嶋律子(Giraffe)
撮影=榎本麻美