好評につき「野草さんぽ」企画の第3弾を決行! ということで、今回はNHK連続テレビ小説「らんまん」で話題の植物学者・牧野富太郎博士ゆかりの地を訪問しました。
博士の生まれ故郷、高知県には広大な牧野植物園がありますが、晩年の三十余年を過ごした自邸の庭も、練馬区立 牧野記念庭園として一般公開されています。訪れた梅雨の晴れ間には、ヒメアジサイ、クチナシなどの花が咲いていました。
ナビゲーターは、CREA WEBで「今日、花を飾るなら。ブルームカレンダー」を連載しているフラワーデザイナーの佐藤俊輔さん。牧野博士が「我が植物園」として愛した園内を散策しながら、草木の愛で方を教わりました。
牧野富太郎博士ゆかりの植物に出合う
練馬区立 牧野記念庭園では、季節ごとにさまざまな植物が開花し、その移り変わりを楽しみに通うリピーターも多いそう。この日は、開園時間と同時にお邪魔しました。
「正門から一歩足を踏み入れると、緑に囲まれているせいか、別天地のようですね。しかもぐんと涼しく感じます」
周辺は住宅街ですが、かつては武蔵野の雑木林だった地で、その面影を残すコナラ、エゴノキといった木々や野山にあるような草木も見られます。心なしか時間も穏やかに流れているようです。
牧野富太郎博士が生涯に発見・命名した植物は1,500種類以上。園内は、スエコザサ、キンモクセイ、ヘラノキといった博士命名の植物をはじめ、300種類以上の植物が生育し、多彩な草木を楽しむことができます。
「まずは牧野博士の胸像がありますので、ご挨拶をしてから博士にゆかりの深い植物を巡ってみましょう」
牧野博士の胸像のもとへ足を運ぶと、早くもゆかりの深い植物が。胸像のまわりには博士が昭和2年に仙台で発見し、妻・壽衛さんへの感謝と愛情を込めて命名したというスエコザサの葉が生い茂っていました。風が吹くとさやさやと懐かしい音をさせる笹に、壽衛さんの姿を重ねたようです。
「スエコザサと記されている樹名板の二次元コードを読み込むと、分布や特徴などの詳細を知ることができますよ。博士ゆかりの主な植物は、パンフレットにもあります。ちょうどヒメアジサイが見頃のようです」
様々な種類のアジサイが点在する小道を歩いていると、ブルーの花房でひときわ目を引くヒメアジサイを発見。博士が昭和のはじめに信州地方で見つけ、その優美な姿から「ヒメアジサイ」と名づけたそう。
「趣がありますね。当時は、自宅に植えて愛でていたそうですが、庭園では一度絶えてしまったらしいです。博士の没後、次女の鶴代さんが高知県立牧野植物園にその一枝を贈ったものが、大切に系統保存されていて、博士生誕160年を記念して里帰りしたものなんですね」
園内には10種類の桜の木がありますが、センダイヤザクラは、高知市内の仙台屋という店の前にあった品種で、博士が名づけたといわれる木です。
「緑がキラキラしていますね。こちらのヘラノキも牧野博士が九州の知人から苗を取り寄せて植えたものとあります。このセンダイヤザクラとヘラノキは、『ねりまの名木』に登録されているだけあって珍しいものです」
2023.07.01(土)
文=大嶋律子(Giraffe)
撮影=榎本麻美