視点を変えると広がる植物の世界

 種類ごとに分けられている見本園のコーナーには、さまざまな山野草が植栽されており、それぞれに手書きで名前の札が。小ぶりの株が多い中で、視線の高さで咲いている花を見つけました。

「アカンサスですね。ヨーロッパの古典的な装飾のモチーフにもなっています。ただ歩きながら見るだけでなく、立ち止まって上から、しゃがんで下から観察してみると、見える世界が広がって発見がありますよ」

 牧野記念庭園には、通常の園芸植物や珍しい花々が華やかに植えられている植物園とは違った魅力があるという佐藤さん。

「この地に古くから自生している植物とか、自然と調和させつつ植栽された植物だとか、野草ならではの可憐な花があったりするのが面白いところ。名前を知らないものが多いかもしれませんが、『雑草という名の草はない』と博士の言葉にもあるように、見上げたり、覗き込んだりして、いろんな角度から見ながら名前を知ると、愛おしさも増します」

 このほかにも、葉っぱの下で下向きに咲いている小さな花などもありました。また、いま咲いている見頃の花だけでなく、実をつけた植物を愛でるのも楽しみ方のひとつだそう。もうひと回りしてみましょう。

2023.07.01(土)
文=大嶋律子(Giraffe)
撮影=榎本麻美