住野 僕も、次の作品では主要人物が全員三十歳の大人なんです。大学時代からの関係性のすれ違いを見直す、みたいな話なんですよね。

島本 いいですね! 楽しみです。

住野 興味本位で伺っちゃって恐縮なんですが、島本さんご自身はどんな高校生だったんですか?

島本 私は最初の高校が全然合わなくて中退して、単位制高校に入り直しているんです。母子家庭でお金が欲しかったのでバイトに明け暮れ、それもあって最初の学校には馴染めず、中学校の時の同級生たちとばっかり遊んでいました。それで夜中に家の二階のベランダから抜け出そうとして落下するという事件を起こしたこともありました……。

住野 そっち方面の青春ですね!(笑)

 
 

島本 ほんとに頭悪いし色々危なかったなと思います。その頃のことはまぶしいような痛いようなつらいような、今でもそんな印象がありますね。でも、次に生まれ変わるんだったら、ちゃんと文化祭とか学校の行事を楽しめる人になりたいです。体育祭で感動して泣ける人になりたい(笑)。当時は外から体育祭を見ているから「リア充たちめ!」みたいな気持ちになっていたけれど、きっとそこにも繊細な人間関係や複雑な心はあったはずで、それも見てみたかったし体験したかったです。住野さんはいかがですか?

住野 僕も全く同じ気持ちです。担当編集さんで一人、僕と同じストロング陰キャがいるんですけど……。

島本 その表現、メチャクチャ刺さります(笑)。

住野 その人と「自分たちは陽キャのリア充をヤダヤダと言ってきたけど、彼らのほうが情に厚くて明るいし人から好かれるし。こんな陰キャになりたくなかった」という話を、悲しい顔でずっとしていて(笑)。ただ、どうして今自分が小説家をやっているかといったら、中高がつまらなかった時に読んだ色んな小説が面白くて、「こんな世界があるんだ」と思えたからなんですよね。そこから自分も、世界を文章で作り出してみたくなっていった。そう考えると、ああいう高校生活でも役にたったのかもしれないなと思うんですが、僕も島本さんと同じで来世はあっち側になっていたい。

2023.04.14(金)
構成=吉田大助
撮影=佐藤亘