◆二人の共同声明、発表!? 「来世はリア充がいい」

住野 僕の小説は十代が主人公になる場合が多いんですが、「まだ考え直せる」「まだ引き返せる」という揺れ動きが、その年代を書くのが好きな理由です。人から影響を受ける余地がたくさんある、揺らいでいる状態だと思うんです。

島本 揺らいでいるということは、変われるってことですもんね。住野さんの作品の主人公の男の子は、ちゃんと相手の女の子のことを考えて言葉にして、返ってきた言葉を受け止めてまた頑張って考える。そこからちゃんと変わっていくものがある、ということを住野さんは書かれている。でも、そういうことを経験せず、変わるきっかけがないまま大人になってしまった男の人って結構いるんじゃないかな、と。実は、そういう人たちが変わる話をこれからいっぱい書いていきたいと思っているところなんです。

住野 面白そう。世界に希望が持てる話ですね。

島本 私は、中学生、高校生、思春期を越えて大人になった女の子を救う話はひと通り書いたかな、とも思うんです。#MeToo運動も出てきて女性が声を上げられるようになって、だいぶ世の中が変わってきた中で、今はそこまで私が小説で声高に訴えなくてもいいのかな、と。そう考えた時に、「じゃあ、男の人は誰が助けるんだろう?」と思ったんです。思春期の頃、行き場のない男の子って大抵不良になって悪いことをしたり、あるいは引きこもったりして、命を落とす子もいた。そこに無条件に手を差し伸べる人もまた、じつは少ないのではないかと。

住野 確かにあんまり見ないかもしれません。

島本 助けてほしいと言えない男の子、というテーマは以前から気になっていて、それは次に書きたいとも思っています。十代の頃の人と関わるのが怖い状態のまま大人になっちゃった男の人を、女性側の視点から描く。大人になっても、理解できるようになるし理解されるようになるし、ちゃんと変われる姿を小説で書けたらな、と。

2023.04.14(金)
構成=吉田大助
撮影=佐藤亘