(1)その動物が自然の摂理にのっとった正しい生活をおくっているとき、その肉は旨い。
(2)その動物と人間が正しくつきあい、互いが深く調和しているとき、その肉は旨い。
(3)料理人がその肉の特性を熟知し、その特性にそった正しいさばきかたをしているとき、その肉は旨い。
本書に登場する肉はすべて旨そうであるが、それは、肉の旨さの背後にこの三つの条件がすべてそろっているからである。この三点を書き尽くしたうえで、平松さんは肉の味を堪能している。本書はありふれた食ルポではない。肉に人生をからめとられた人間模様を描きだすところに力が込められているが、その理由もこうしたところにあるのではないだろうか。
2023.04.06(木)
文=角幡 唯介(探検家・作家)