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映像コントとしての「ピノキオ・カンパニー」

――映画の脚本を小説にするのは難しそうですが、苦労したことはありますか?

太田 苦労はしなかったですね。むしろ楽しかったくらいで。内容はほとんど変えていないけど、膨らませたところはあって。アドムとアフマルというキャラクターの生い立ちなんかがそう。中東関係の本を読んで、深く掘り下げました。

――今作で最初に思い浮かんだのは、どのシーンなんですか?

太田 あまり覚えていないけど、31ページの「ピノキオ・カンパニー」のCMかもしれない。本当かうそかわからない、「死者の魂を電気信号にする」っていうところ。ああいういかにも偽善的なCMを、映像コントとして面白く撮りたいっていうのはあったかな。

――あのCM、かなり印象的ですよね。

太田 生と死をどう扱うかは、今作のテーマでもあるんだよね。AIや人形なんかもそうだけど、どこからが生きものかって、命の線引きは難しいじゃないですか。2次元とか、バーチャルのキャラクターに恋をする方もいっぱいいるわけで。

 物語全体としては、コントの組み合わせみたいな感じで作っていきましたけど、普段から思っていることを作品に反映させた部分は、あるかもしれませんね。

2023.03.08(水)
文=ゆきどっぐ
撮影=榎本麻美/文藝春秋
スタイリスト=植田雅恵