この記事の連載
- 太田 光インタビュー #1
- 太田 光インタビュー #2
物語のヒーローは、「どこにでもいる駄目な奴」
――物語全体を通して、太田さんの政治哲学も伝わってきました。
太田 ヒーローものの映画って、主流はマーベルとかスター・ウォーズとかトップガンじゃないですか。でも、彼らはたいてい暴力で解決するんですよ。それって、腕力が強くないとヒーローになれない感じがするじゃないですか。
俺は、そうじゃないヒーローを作りたいなって思ったんですよね。腕力がなくてもヒーローになれる。しかも、ずっこけで。どこにでもいる駄目な奴がヒーローでさ。
――物語では、東日本大震災を示す描写もありますよね。被災者が書いたノートは印象的でした。あれは実話なんですか?
太田 岩手県大槌町に「風の電話」と呼ばれる電話ボックスがあって、被災者の方たちが電話線のつながっていない黒電話に向かって話すんです。そのニュースが印象に残っていて、イメージを膨らませましたね。
我々はどうしても、今起きていることをテーマにするわけです。そうすると、日本が抱えている問題として「核のごみ」の最終処分場があるわけで。
この作品での核に対する決着のつけ方って、すごく残酷だけど。それを決めるのは政治家だからさ。物語では主人公の義父である政治家の富士見興造が、「核のごみ」の最終処分場に対してある決断を行ったことにして、それが評価される世界を描いた。そのまま見ないふりをするんじゃなくて、「最後の決着をつける」ってことを、良しとしたい、と思って。
太田 光(おおた・ひかり)
1965年5月13日生まれ。埼玉県出身。1988年に田中裕二と「爆笑問題」を結成。現在は、2カ月に1度開催する「タイタンライブ」への出演のほか、テレビやラジオのレギュラー番組を多数抱える。2022年に公式YouTubeチャンネル『爆笑問題のコント テレビの話』を開設。執筆活動にも精力的で、小説『マボロシの鳥』(2010年)、『文明の子』(2012年)を上梓した。
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2023.03.08(水)
文=ゆきどっぐ
撮影=榎本麻美/文藝春秋
スタイリスト=植田雅恵