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 主要国のリーダーが集結する「マスターズ和平会議」。世界に平和が訪れる瞬間、ある出来事がきっかけで会議は中止に。ピースランド首相・富士見幸太郎は、マスターズ和平会議を再び開催するため奔走するーー。

 原稿用紙1200枚に及ぶエンターテインメント小説『笑って人類!』。著者の太田 光さんに、今作に込めた思いを伺います。(インタビュー【後篇】を読む)


シナリオが頭から離れなかった

――『笑って人類!』は、原稿用紙1200枚の長編です。書くのに時間がかかったと思いますが、書き始めたのはいつ頃ですか?

太田 6~7年くらい前かな。もともとは映画にするために2年かけた脚本なんですよ。それを、また2年かけて小説に直して。

――なぜ映画の脚本を小説に?

太田 もともとは映画を作ろうと思っていたんだけど、出来上がった脚本を配給会社に提出したら、「つまらない」と役員会議で言われて通らなかったんだよね。役員会議でボツになった脚本は、二度と映画の企画になることはない。つまり、この脚本が映画になることはなくなったんです。

 だけど、2年かけた思い入れのある作品を、役員の一言で世に出せないのは悔しかった。それに、俺の頭の中にどうしても脚本が残っちゃってさ。「じゃあ小説で」って切り替えて書き始めたのよ。

コメディアンの大勢出る日本映画を撮りたい

――映画の企画では、配役を多少決めていたそうですね。少しうかがってもいいですか?

太田 いいですよ。映画になる前で、適当に当てただけだしね。俺は『社長漫遊記』とか『無責任』(以上、東宝)シリーズみたいなコメディ映画を作りたい、と思っていたから、配役にはコメディアンを揃えたかったんですよね。

 主人公で、ピースランド首相の富士見幸太郎は俳優さんなんだけど、首相政務秘書・首席秘書の桜春夫は俺で、第三秘書の末松幹治は劇団ひとり。事務担当首相第二秘書の五代拓造は迷っていたんだけど、石塚(英彦)さんかなって。ヒロイン役のアン・アオイは難しいよね。誰かは決めてなかった。……強いて挙げるならオードリー・ヘップバーンかな。

2023.03.08(水)
文=ゆきどっぐ
撮影=榎本麻美/文藝春秋
スタイリスト=植田雅恵